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アルポート(Alport)症候群

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-19
吉川徳茂 (和歌山県立医科大学臨床研究センター長)
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  • ■疾患メモ

    アルポート症候群は神経性難聴を特徴とする遺伝性腎疾患として,1927年にAlportにより報告された。

    糸球体基底膜に特徴的な変化がみられ,正常では存在する糸球体基底膜のコラーゲン成分が欠如していることから,病因は糸球体基底膜を構成するⅣ型コラーゲンの異常にあると考えられてきた。1990年に初めてⅣ型コラーゲン遺伝子の変異が明らかにされて以来,多数の遺伝子変異が報告されている。

    遺伝形式の大部分はX連鎖型遺伝であるが,常染色体劣性・優性遺伝も報告されている。発症頻度は欧米では1/5000~1万人と報告され,人種差や地域差はない。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    病初期には血尿が唯一の所見である。血尿は出生時よりみられ,持続性の顕微鏡的血尿に,発熱時などは肉眼的血尿を伴うことが多い。

    蛋白尿は進行とともに増加していき,ネフローゼ症候群を呈することもよくある。

    神経性難聴は7~10歳頃,両側性に出現し,まず高周波領域における聴力低下が起こり,進行性に増悪していく。遺伝性腎炎の患者の約1/3に難聴がみられるが,男児に多く女児には稀である。

    網膜,角膜の異常も報告されている。

    アルポート症候群は進行性の慢性腎炎であるが,小児期には通常腎機能は正常で,思春期以後,徐々に腎機能が低下しはじめ,男性患者では10歳代後半,20歳代,30歳代で末期腎不全に至るものが多い。

    X連鎖型アルポート症候群の女性患者は一般に進行が遅く,腎不全に進行することは稀であると考えられてきたが,最近では高頻度で腎不全に進行することが報告されている。

    【検査所見】

    Ⅳ型コラーゲン遺伝子変異とアルポート症候群の関係が明らかとなり,アルポート症候群の診断にもこの知見が応用されている。現在筆者らは労力とコストの面から,まず免疫組織学的検索を行い,免疫組織学的に異常を認めた症例について遺伝子検索を行っている。

    〈免疫組織学的検索による診断〉(図12

    07_31_アルポート(Alport)症候群

    07_31_アルポート(Alport)症候群

    Ⅳ型コラーゲンα5(Ⅳ)鎖は,糸球体基底膜だけでなく皮膚上皮基底膜にも存在する。

    抗α5(Ⅳ)鎖抗体を用いて免疫染色をすると,正常の糸球体,皮膚基底膜は線状に連続して染色される。しかしⅩ連鎖型アルポート症候群の男性患者の糸球体,皮膚基底膜はまったく染色されず,女性患者の糸球体,皮膚基底膜は一部が染色される。

    〈遺伝子診断〉

    α3~5(Ⅳ)鎖遺伝子の変異を検索する。

    ゲノムDNAを用いてすべてのエクソンとプロモーター領域をPCRで増幅し,ダイレクトシークエンスを行うことで,80%を超える遺伝子変異の検出率が得られる。さらにRNAを使用する方法やMLPA(multiple ligation-dependent amplification)法などにより,ほぼ100%の原因遺伝子変異が検出できる。

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