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吸収不良症候群(原発性:セリアックスプルー,乳糖不耐症)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
柏木和弘 (慶応義塾大学病院予防医療センター講師)
岩男 泰 (慶応義塾大学医学部予防医療センター教授)
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  • ■疾患メモ

    ここでは,吸収不良症候群(malabsorption syndrome)のうち,原発性であるセリアックスプルー(celiac sprue)と乳糖不耐症(lactose intolerance)を扱う。

    セリアックスプルーは,小腸粘膜吸収障害が原因の原発性吸収不良症候群のひとつで,グルテン腸症,セリアック病とも呼ばれる。蛋白質のグルテン(小麦,大麦,ライ麦に含まれる)に対する遺伝性の不耐症である。グルテンに対する免疫反応により,小腸粘膜上皮に炎症が起こり絨毛萎縮を引き起こし,全栄養素の吸収障害が生ずる。

    乳糖不耐症は原発性吸収不良症候群に属し,刷子縁膜病(小腸の上皮細胞の内腔側の,刷子縁膜にある刷子縁膜酵素の欠乏や欠損が原因)のひとつである。乳糖分解酵素(ラクターゼ)の欠損によって起こる。乳糖が未消化のまま大腸に達すると,腸内細菌の発酵反応により生成された短鎖脂肪酸が下痢を引き起こす。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    〈セリアックスプルー〉

    下痢,高度な低栄養,体重減少,全身倦怠感が主な症状である。

    全栄養素の吸収障害のため種々の症状を引き起こす。

    セリアックスプルー患者全体の約10%に,疱疹性皮膚炎がみられる。皮膚に小さな水疱を伴い,痛みとかゆみのある湿疹が生ずる。

    〈乳糖不耐症〉

    小児では下痢,体重増加不良,成人では腹部膨満感,下痢,鼓脹,嘔気などがみられる。

    【検査所見】

    〈セリアックスプルー〉

    血清学的診断:抗組織トランスグルタミナーゼIgA(IgA-TTG)を測定する。ほかに,抗筋内膜抗体などを測定することもある。

    組織学的診断:内視鏡的に粘膜傷害を認めない場合も生検を行う。小腸粘膜生検で陰窩過形成と上皮内リンパ球増加を伴う絨毛の萎縮を認める。グルテン摂取を止めると小腸粘膜傷害は改善される。

    遺伝子診断:HLA-DQ2またはHLA-DQ8陽性である。

    その他:全血球,フェリチン,ビタミンB12,葉酸,銅,亜鉛,Ca,25-ヒドロキシビタミンD,骨密度(成人)の測定とモニタリングを行う。

    〈乳糖不耐症〉

    乳製品を摂取後に発生する症状により,本症を疑う。

    3~4週間,乳製品を除いた食事を摂取して症状が消失すれば,診断確定とする。

    乳糖負荷後呼気試験:乳糖20gを経口負荷し,呼気中水素が20ppm以上検出された場合,陽性である。

    組織学的診断:空腸の刷子縁でのラクターゼ活性が低下している場合(<17~20IU/g)陽性である。

    遺伝子診断:コーカサス人では,ラクターゼ遺伝子多型が13910CCであれば,non-persistenceである。

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