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吸収不良症候群(腸内細菌異常増殖症候群,盲係蹄症候群など)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
馬場重樹 (滋賀医科大学消化器内科)
安藤 朗 (滋賀医科大学消化器内科教授)
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  • ■疾患メモ

    吸収不良症候群(malabsorption syndrome)は,消化吸収機能の低下により種々の栄養障害をきたす疾患の総称である。

    栄養素の消化吸収機構は消化管管腔での処理相,腸管粘膜での吸収相,そして小腸吸収上皮での処理相と全身循環への移送相にわけられ,各相での障害から本症候群を分類することが可能である(表1)。

    05_61_吸収不良症候群(腸内細菌異常増殖…)

    診断には各種の消化吸収試験が用いられるが,近年登場した小腸内視鏡検査は病態把握や診断に直結する情報が得られることがあり,積極的に施行が勧められる。

    腸内細菌異常増殖症候群(small intestinal bacterial overgrowth:SIBO)とは,小腸における細菌の量的な過剰増殖と質的な異常増殖を指し,消化吸収障害から吸収不良症候群を呈することがある。

    細菌増殖を制御する機構として胃酸分泌,腸管蠕動運動,膵液・胆汁などの分泌,回盲弁の存在,分泌型IgAなどの免疫機序などが挙げられるが,その因子が破綻・欠乏することによりSIBOが発症する(表2)。

    05_61_吸収不良症候群(腸内細菌異常増殖…)

    盲係蹄症候群(blind loop syndrome:BLS)は手術により生じた解剖学的盲係蹄に細菌の異常増殖をきたした病態であり,SIBOに含まれる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    消化吸収症候群は消化吸収障害を生じる疾患を総称したものであり,体重減少,下痢,貧血がみられる場合,本疾患を鑑別に含める。

    主なビタミン欠乏症を表3に示した。

    05_61_吸収不良症候群(腸内細菌異常増殖…)

    鉄欠乏では小球性低色素性貧血をきたすが,そのほかにも微量元素欠乏症状として亜鉛欠乏では皮疹,銅欠乏では造血障害,セレン欠乏では爪の変形や心筋症などがみられる。

    SIBOでは小腸内に水素やメタンを主としたガスが産生・蓄積され,腹部膨満,鼓腸,または腹部不快感をきたす。

    SIBOにて体重減少をきたす症例はほとんどみられないが,吸収不良を認める場合は下痢や脂肪便といった症状を呈する。

    短腸症候群でSIBOを有する症例は,炭水化物の摂取後にD-乳酸アシドーシスから一過性の運動失調やせん妄をきたすことがある。

    【検査所見】

    吸収不良症候群と診断するには各種の消化吸収試験により消化吸収能を評価する必要がある。診断には次の①~③の基準が提唱されている2)。①下痢,脂肪便,体重減少,るい痩,貧血,無力倦怠感,腹部膨満,浮腫,消化管出血(潜出血を含む)などの症状がみられることが多い,②血清蛋白濃度,アルブミン濃度,総コレステロール値,および血清鉄などの栄養指標の低下を示すことが多い。血清蛋白濃度6.0g/dL以下または血清アルブミン値3.5g/dL以下,かつ総コレステロール値120mg/dL以下が高度な低栄養状態の指標となる,③消化吸収試験で異常がある。

    臨床症状や臨床所見から吸収不良症候群が疑われた場合には,糞便中脂肪を検査する。糞便中脂肪のズダンⅢ染色で脂肪滴の増加や,化学定量法で1日6g以上あるときを異常とする。

    糞便中に脂肪が確認できれば,D-キシロース試験により糖質の消化吸収を判定する。D-キシロース試験は近位小腸の吸収能を反映し,経口摂取したD-キシロースの尿中への排出率の低下を異常とする。D-キシロース試験は,消化障害型の吸収不良症候群では異常とならない。

    乳糖不耐症には乳糖負荷試験,膵疾患にはPFD(pancreatic function diagnostant)試験が用いられる。また,胆汁酸負荷試験は回腸の病態をみるために施行される。

    悪性貧血,盲係蹄症候群,回腸切除やクローン病などの回腸疾患ではビタミンB12吸収試験(Schilling試験)の低下がみられる。

    ビタミンKや葉酸は腸内細菌叢によって産生されるためSIBOでは正常~高値を示す。

    SIBOの診断基準は確立していない。小腸細菌数評価法のゴールドスタンダードとして空腸吸引液培養が用いられ,培養にて小腸での細菌数の増加がみられる場合にSIBOの診断がなされてきた。しかし,侵襲的であることやサンプリングエラー,難培養菌の扱いが困難であることなどの問題があり普及はしていない。

    SIBOの非侵襲的な検査法として呼気試験がある。糖基質(ラクツロース,グルコース,D-キシロース)を経口的に投与し,腸内細菌で代謝されて呼気に出てくる水素やメタン,標識二酸化炭素といった代謝物を経時的に測定する方法である。しかし,空腸液吸引培養と比較して特異度,感度が低く,また試験方法が標準化されていない。

    特徴的な内視鏡所見を有する吸収不良症候群として,クローン病(縦走潰瘍,狭窄),セリアックスプルー(絨毛萎縮,scalloping),ウィップル(Whipple)病(びまん性白色絨毛),腸リンパ管拡張症(散布性白点),消化管アミロイドーシス(粘膜粗造や多発微細隆起),先天性βリポ蛋白欠損症〔十二指腸で白色霜降り状所見(snow white duodenum)〕,放射線性腸炎(粘膜の肥厚,充血,潰瘍,狭窄)などが挙げられる3)

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