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慢性胃炎[私の治療]

No.5052 (2021年02月20日発行) P.34

春間 賢 (川崎医科大学総合医療センター総合内科学2特任教授)

末廣満彦 (川崎医科大学総合医療センター総合内科学2講師)

登録日: 2021-02-19

最終更新日: 2021-02-17

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  • 慢性胃炎は日常診療でよく用いられる病名で,多くは,胃痛や胃もたれなどの自覚症状があるが原因となる器質的疾患が認められない機能性ディスペプシアか,画像診断で診断する形態学的胃炎,胃生検や摘出胃で病理組織学的に診断する胃炎の3つを意味して用いられる。しかしながら,実地診療では,検査や投薬のための保険病名として用いられていることも多い。胃炎の診断名は,正しくは胃粘膜の病理組織学的な炎症を意味し,主に,ヘリコバクター・ピロリ(以下,ピロリ)感染により起こることから,将来的には組織学的胃炎のあるものに用いる病名である。胃炎の原因がピロリ感染であることが確診された場合,ピロリ胃炎という病名に変更する。

    ▶診断のポイント

    内視鏡検査により逆流性食道炎,消化性潰瘍,胃癌などの器質的疾患を除外するとともに,胃粘膜を胃炎の京都分類をもとに観察することと,必要に応じて胃生検による病理組織学的診断が必要である。病理組織学的胃炎は主にピロリ感染で起こるが,ピロリ以外のヘリコバクター属(主にヘリコバクター・ハイルマニーによることが多い),サイトメガロウイルス,結核,梅毒などの感染,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの薬剤によるもの,自己免疫機序(自己免疫性胃炎あるいはA型胃炎と呼ばれる),アレルギー(好酸球性胃炎あるいは好酸球性胃腸症)によることや,クローン病などの全身性疾患に伴うもの,collagenous gastritis,肉芽腫性胃炎など,特殊な胃炎もある。

    慢性胃炎の血清マーカーとしてペプシノゲンがあり,胃癌検診や健診のオプションとして用いられている。ピロリ感染診断は慢性胃炎のスクリーニングとなるが,実診療では内視鏡検査前にピロリ感染診断を行うことは保険適用となっていない。

    自己免疫性胃炎(A型胃炎)の診断には,血清ガストリン,抗胃壁細胞抗体,抗内因子抗体の測定が必要となる。また,胃体部の胃生検組織の病理組織診断で,ピロリ感染とは異なる胃炎の所見やendocrine cell hyperplasiaやendocrine cell micronestなどの存在が診断の参考となる。

    ピロリ以外のヘリコバクターによる胃炎は,non-Helicobacter pylori-Helicobacter(NHPH)胃炎と呼ばれ,ヘリコバクター・ハイルマニー感染によるものが多い。現在のところ確定診断法はなく,ピロリ感染を否定した上で,胃生検組織の検鏡でピロリより大型の桿菌を検出することが,各施設で行える唯一の診断法である。ピロリ感染率の低下とともに増加傾向にある。また,ピロリ菌との混合感染例も認められる。

    自己免疫性胃炎は稀な疾患と考えられていたが,繰り返し除菌を受け(“泥沼除菌”と呼ばれる)成功しない患者,胃癌検診で行われるABCリスク評価のD群にかなり含まれている(約25%)こと,また内視鏡施行医の関心度の高まりとともに,その頻度は増えている。

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