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かかりつけ医の慢性腎臓病(CKD) 診療の現状と課題 [学術論文]

No.4699 (2014年05月17日発行) P.19

森下義幸 (自治医科大学腎臓内科講師)

草野英二 (宇都宮社会保険病院院長)

長田太助 (自治医科大学腎臓内科教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-03

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  • かかりつけ医のCKD診療(栄養・運動指導,投薬)の現状と課題を自治医科大学卒業医師へのアンケート調査により検討した。その結果,CKDへの栄養指導は広く浸透していたが,運動指導は浸透していなかった。投薬では,降圧薬は高頻度,スタチン,抗血小板薬,エリスロポエチン,球形吸着炭(クレメジン1397904493)は中頻度,ビタミンD,炭酸水素ナトリウムは低頻度に処方されていた。

    1. かかりつけ医による適切な診療はCKDの予後に重要

    慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)とは腎臓の障害(尿,画像診断,血液,病理の異常),もしくは糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が60mL/分/1.73m2未満の腎機能低下のいずれか,または両方が3カ月以上持続するものである。CKDの重症度は原因,腎機能(GFR),尿蛋白(アルブミン尿)による分類で評価する。CKDは透析や腎移植が必要となる末期腎不全へ進行するだけでなく,心血管疾患発症の危険因子であり,糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病とも密接に連関している1)
    CKDの患者数は世界的に増加しており,わが国でも成人人口の13%(1330万人)に達すると推定されている1)。このように,非常に多数のCKD患者を腎臓病専門医のみで診療することは不可能であり,プライマリケアの第一線で活躍している,かかりつけ医(家庭医,general practitioner)による適切なCKD診療がその予後にきわめて重要である。
    筆者らは,かかりつけ医のCKD診療を検討するため,自治医科大学(以下,自治医大)卒業医師へCKD診療に関するアンケート調査を行った。本稿ではその結果から明らかになった,かかりつけ医のCKD診療の現状と課題について述べる。

    2. 自治医大卒業医師へのアンケートからCKDかかりつけ医を抽出

    自治医大卒業医師は全国に広く勤務している。また,地域医療に従事する義務年限があり,義務年限終了後も多くの医師が様々な専門性を持ちながら,かかりつけ医としてCKD診療を含む日常診療に従事していることから,本研究の対象とした。研究方法は自治医大を1978〜2012年の間に卒業した3310名の医師に,CKD診療(栄養・運動指導,投薬)および自身の年齢,専門科,勤務場所(透析センターの有無を含む),運動習慣などについて郵送によるアンケート調査を2012年に実施し,その結果を解析した。
    対象とした3310名中933名(28.2%)から回答が得られた。解析可能であった896名のうち581名(64.8%)の医師がCKD診療をしていた。本研究ではこの581名の医師をCKD診療かかりつけ医(以下,かかりつけ医)として解析を行った。

    3. かかりつけ医は保存期CKDを多く診察している

    かかりつけ医の年齢分布は24歳以上30歳未満55名(9.5%),30歳以上40歳未満189名(32.5%),40歳以上50歳未満175名(30.1%),50歳以上60歳未満154名(26.5%),60歳以上8名(1.4%)であった。
    専門科は内科350名(60.2%),外科48名(8.3%),総合診療科145名(25.0%),小児科12名(2.1%),その他26名(4.5%)で,内科が最も多かった。
    勤務場所は大学病院51名(8.8%),総合病院89名(15.3%),一般病院187名(32.2%),診療所239名(41.1%),その他(療養型病床含む)15名(2.6%)で診療所,一般病院が多かった。勤務場所に透析センターが“ある”228名(39.2%),“ない”353名(60.8%)で,透析センターのない医療機関に勤務しているかかりつけ医が多く,透析患者ではない保存期CKD患者を多く診察していることが示唆された。

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