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【OPINION】「総合診療医」と「かかりつけ医」をめぐる諸問題について

No.4700 (2014年05月24日発行) P.13

岩本伸一 (大阪府医師会調査委員会委員/東成区医師会理事)

中村正廣 (大阪府医師会調査委員会委員長/東成区医師会長)

遠山祐司 (大阪府医師会調査委員会副委員長/都島区医師会長)

鈴木隆一郎 (大阪府医師会調査委員会副委員長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-03

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  • はじめに

    厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」において、基本領域専門医の認定の中に19番目として「総合診療専門医」の創設が提案され、今月、専門医の認定を行う「日本専門医機構」が発足した。平成29年度に専門医研修を開始する医師から新制度の対象とするとして議論が進められている。
    これに対し、医師会は「かかりつけ医」機能が普及、定着し国民の間に所与のものとなっていることを主張している。「総合診療医」という概念は、従来医師会が推進してきた「かかりつけ医」機能と重複するものであると考えられ、特に専門医として機能を分離すべきものであるのだろうか。さらに活発な議論が進められることを期待し、本稿においては大阪府医師会の医師会員調査の結果を踏まえ、「かかりつけ医」と「総合診療医」両者の今後の在り方について考察したい。

    対象、方法、結果

    大阪府医師会では、昭和46年より会員を対象とした意見調査を隔年実施している。
    対象者は、大阪府医師会の会員約1万6千人を診療所長、病院長、勤務医に区分し、年齢層化無作為抽出法により抽出している。今回は、平成19、21、23、25年の総合医に関する以下の8つの質問を使用し、診療所長の回答について検討した。平成25年調査では、診療所長1,133名、病院長523名、勤務医1,400名の計3,056名に調査票を配布し、同年9月までに2,140名から回収した。調査は無記名、自記式で行い、有効回収率は70.0%であった。なお、調査結果は、会員構成比を復元するよう、年齢階級別に乗数で補正し、推計値で表した。
    1.「かかりつけ医」が病気の治療以外に行う重要な業務は?(複数回答可)【実施年(以下同様):平成19年、21年、23年、25年】(図1)
    いずれの年も健康相談、医療機関紹介、疾患管理、健康診断、健康教育、予防接種が上位であった。


    2.「かかりつけ医」の研修・認定制度についてどう思いますか。【平成19年、21年、23年、25年】(図2)
    「現在の生涯教育システム制度でよい」および「現在の生涯教育システム制度を拡充する」を合わせると、いずれの年も約6割あった。「新しい研修・認定制度を設ける必要がある」は1割程度だった。


    3.かかりつけ医に対する報酬はどうあるべきと思いますか。【平成19年、21年】(図3)
    出来高払いを支持する回答が多かった。


    4.「かかりつけ医」の充実のために重要と思うものを選んでください。【平成25年】(図4)
    「医師の教育・研修体制の充実」が41.3%だった。


    5.厚生労働省の検討会では、専門医のあり方を検討していく中で、専門医の1つのカテゴリーとして「総合診療専門医」を作ろうとしています。このことを知っていますか。【平成25年】(図5)
    7割以上が認知していた。


    6.「総合診療医」という名称にどのような機能をイメージしますか。(複数回答可)【平成25年】(図6)
    「外来でのゲートキーパーや振り分け機能」「かかりつけ医機能」が多かった。


    7.「総合診療専門医」という専門医の新設を支持しますか。【平成25年】(図7)
    「支持する」は19.2%、「支持しない」は41.1%であった。


    8.国が構想する「総合診療医」や「総合診療専門医」が創設されると、「人頭払い制度の導入」や「患者のフリーアクセスの制限」をもたらすことに繋がり、これまで構築されてきた地域医療体制に支障をきたすという意見があります。この点についてどう思いますか。【平成25年】(図8)
    「支障をきたすと思う」は38.1%、「そうは思わない」は15.4%だった。


    以上より、「かかりつけ医」が行うべき重要な業務は、総合診療医の概念とほぼ一致する内容であると考えられた。総合診療医制度導入に対する否定的意見はまだまだ根強く、現行の「かかりつけ医」機能の発揮でもよいのではないかと考えられた。

    残り2,254文字あります

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