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膵臓の中に見つけたもう一つの星(STAR)!?[プラタナス]

No.4902 (2018年04月07日発行) P.3

福嶋敬宜 (自治医科大学病理学・病理診断部教授)

登録日: 2018-04-09

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  • 膵臓の中に星細胞(stellate cell)という細胞があるのを御存じだろうか?慢性膵炎や膵管癌に関連してみられる線維化のもとになる細胞であり、世界中で多くの研究者が注目しているまさに“スター細胞”といえる。

    一方、写真は膵臓の粘液性囊胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm;MCN)という、圧倒的に女性に多い腫瘍の囊胞壁の組織像である。この腫瘍の上皮下の間質に細胞密度の高い独特の組織像がみられることは、今では医学生でも知っているに違いない。しかし、この間質組織像を世界保健機関(WHO)が“ovarian-type”stromaと表現し、MCNの特徴として組織分類の説明に加えたことは、当時の我々には少なからずショックだった。1996年のことである。実は、この独特の間質の存在に我々も注目しており、ちょうど海外の雑誌に論文を投稿しようとしている矢先のことだったのだ。それは、MCNとの異同や鑑別が問題となっていた粘液産生膵腫瘍〔現・膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)〕には“ovarian-type” stromaがみられないというのが大きなポイントだった。論文執筆のため、多くの関連論文を読んだが、それを指摘したものはなかったはずだった。ところが、雑誌論文どころか、国際的権威とも言えるWHOの組織分類にいきなり掲載されてしまったのだから我々の落胆は大きかった。その後、この“ovarian-type” stromaは国内でも瞬く間に知られていき、それまで15年間ほど喧々諤々と議論してきたIPMN vs. MCN論争にも終止符が打たれることになったのである。

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