Mycoplasma pneumoniae(Mp)感染によって生じる主な疾患は,肺炎などの呼吸器疾患であるが,これらのほかに様々な合併症が生じることが知られている。中でも神経合併症は比較的頻度が高く,脳炎や急性散在性脳脊髄炎などの中枢神経障害やギラン・バレー症候群(GBS)などの末梢神経障害の合併が報告されており1),特にGBSは比較的高頻度に経験される。
GBSの先行感染の中で,Mp感染は2~6%と報告されている。GBSでは末梢神経系の構成成分である糖脂質に対する抗体が50~60%の症例で検出され,これらは先行感染因子と糖脂質間の分子相同性に基づいて産生されると考えられている。Mp感染後GBSにおいては,髄鞘に存在するgalactocerebroside(Gal-C)に対する抗体の関与が報告されており,さらにMpの構成成分中にGal-C様糖鎖構造が存在することも示されている2)。本抗体はGBS全体の数%~10%程度で検出されるが,Mp感染後GBSにおいては高頻度に陽性となる。抗Gal-C抗体陽性GBSでは,脱髄型の頻度が高く,同抗体陰性GBSと比較して感覚障害,自律神経障害が有意に多く,電気生理学的にも感覚神経障害が有意に高頻度に確認されることが報告された3)。自律神経障害には不整脈をはじめ致死的なものも含まれるため,抗Gal-C抗体陽性のGBSでは自律神経障害に十分注意する必要がある。
【文献】
1) Kuwahara M, et al:J Neurol. 2017;264(3):467-75.
2) Kusunoki S, et al: Neurology. 2001;57(4):736-8.
3) Samukawa M, et al:J Neurol Sci. 2014;337(1-2):55-60.
【解説】
寒川 真 近畿大学神経内科講師