舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎を治癒する可能性のある治療法である
免疫療法はアレルギー炎症に関与する細胞の機能を修飾する
スギ花粉症発症に関与する遺伝子解析により治療効果に関するバイオマーカー候補を選出した
舌下アレルゲン免疫療法(以下,舌下免疫療法)は,世界保健機関(World Health Organization:WHO)において,アレルギー性鼻炎の自然経過を変えることができる唯一の治療法と位置づけられている。わが国ではガイドラインが整備され,2014年からはスギ,ダニによるアレルギー性鼻炎に対して舌下免疫療法が保険適用となり,皮下免疫療法に加えて一般に普及しはじめている。本稿では,免疫療法の作用機序からみたバイオマーカー候補や,福井大学でのバイオマーカー探索について述べる。
福井大学において行ったスギ特異的舌下免疫療法の臨床研究では,中等量飛散期(4852個/cm2)において,舌下免疫療法の使用年数が1~5年を経た5群の総症状薬物スコアを比較した。その結果,3年以上治療を継続している群では1,2年の群と比較して,花粉飛散のピークにおいて有意にスコアの改善を示した。改善したスコアは1.43であった(図1)。薬剤はこのスコアに換算すると,抗ヒスタミン薬=1,ステロイド=2とされているため,治療効果としては,抗ヒスタミン薬<舌下免疫療法<ステロイドという序列がつけられるのではないかと考えている。そのため,舌下免疫療法を希望する患者に効果を説明する際には,抗ヒスタミン薬の使用量や頻度を抑えられる,マスクやメガネによる回避だけでもまずまずの生活を送ることができるといった効果が期待できると説明している。ダニによるアレルギー性鼻炎の患者にも同様の効果が期待できると考えている。海外からは,いくつかの舌下免疫療法および薬物治療の臨床試験データを集積して解析した論文がある。ハウスダストによる通年性鼻炎に対して舌下免疫療法を行った結果,総鼻症状スコアにおいて実薬では偽薬と比べて16.1%の改善がみられた。その他の薬剤として,モンテルカスト,デスロラタジン,モメタゾン点鼻薬の結果が示されているが,それぞれ3.7%,4.8%,11.2%の改善であった。治療効果が発揮されれば,抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイドよりも舌下免疫療法の治療効果が高いという結果であった1)。
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