死亡診断後,施設から自宅へ死体を搬送するときに,死亡診断書を必ず携帯しなければなりませんか。また,葬儀社より死亡診断書に捨て印を押すように依頼されますが,必ず必要なのでしょうか。死亡診断書は,翌日,医院に取りに来てもらうようにしています。
ネットで調べると「霊柩車はOKだが自家用車は不可」「検問に遭遇したときに面倒なだけで,必ずしも必要ではない」と様々な見解がみられます。検問に遭遇することはほとんどないでしょうが,葬儀社の社内規定で「死亡診断書がないと運ばない」としていたら家族が困るので,医師は当日に死亡診断書を書かざるをえないのでしょうか。
(兵庫県 S)
前提として,医師法第19条第2項に,医師は,「(死亡診断書の)交付の求があつた場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない」との規定があります(同条項の「診断書」は「死亡診断書」を含む)。しかし,交付をいつまでにしなければならないかの定めはありません。
ただ,死亡診断書は死亡届と一体となっており,「死亡の届出は,届出義務者が,死亡の事実を知った日から7日以内に,これをしなければならない」とされています(戸籍法第86条第1項)。加えて,火葬許可を受けるためには,死亡の届出が必要ですから,通常は,火葬に間に合うように死亡診断書の交付を求められることと思います。そうすると,ご質問のように死亡診断書を死亡の翌日に交付することで問題はありません。ところが,ネット上には「死体を搬送するときには,死亡診断書の携帯が必要」との情報があります。ご質問にあるように,葬儀社が死亡診断書の携帯を求めることがあるのかもしれません。あるいは,ネット上には「霊柩運送事業の許可を受けた営業用自動車(緑ナンバー)であれば死亡診断書の携帯は不要だが,自家用車では必要」との情報もあります。
しかし,いずれも不正確です。死体を搬送するときに,死亡診断書の携帯が必要であることを定める法令はありません。営業用自動車であっても,自家用車であっても,死亡診断書の携帯は義務付けられていません。
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