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多発性囊胞腎におけるトルバプタンの意義【トルバプタンの保険収載により,ADPKD領域に治療の選択肢が生まれた】

No.4884 (2017年12月02日発行) P.55

長洲 一 (川崎医科大学腎臓・高血圧内科講師)

登録日: 2017-12-04

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多発性囊胞腎,特に常染色体優性多発性囊胞腎(ADPKD)に対して新たな治療薬としてトルバプタンが使用可能となった。ADPKDは最も多い遺伝性疾患のひとつで,60歳までに約半数の患者が透析導入となる1)。以前は有効な治療はなく,透析導入数は一定に推移していた。診断の最重要事項は家族歴で,99%の患者が家族歴を有し,孤発例は0.1~0.2%程度である2)。病理解剖から得られた発症頻度の報告は約1/500人3)だが,実臨床で診療が必要な患者数から割り出した罹患率は1/4033人程度である4)。この理由として,十分な診断に至っていない症例の存在が示唆されると筆者は考える。トルバプタンは2014年に保険収載され,ADPKD領域に治療の選択肢が生まれた。同時にADPKDが指定難病となったことも大きな進展である。

トルバプタンは囊胞増大速度を有意に減少させ,結果としてGFR低下速度を減少させる5)。一方で,遺伝性疾患であることや薬剤投与時には飲水行動が必須であるなど,十分な説明と同意が必要である。このため,指定難病申請の必要性も含め,専門医によるshared decision makingが必要と考える。本薬剤の適切な使用により,ADPKD患者の予後改善が期待される。

【文献】

1) Hateboer N, et al:Lancet. 1999;353(9147): 103-7.

2) Pei Y:Clin J Am Soc Nephrol. 2006;1(5):1108-14.

3) 東原英二, 監:多発性嚢胞腎の全て. インターメディカ, 2006, p16-21.

4) 丸山彰一, 監:エビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2017. 東京医学社, 2017.

5) Kawano H, et al:Clin Exp Nephrol. 2015;19(5): 968-73.

【解説】

長洲 一 川崎医科大学腎臓・高血圧内科講師

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