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予知からの転換、新たな防災へ[お茶の水だより]

No.4875 (2017年09月30日発行) P.15

登録日: 2017-09-28

最終更新日: 2017-09-28

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▶予知を前提とした防災が転換する。内閣府の中央防災会議作業部会は26日、南海トラフ地震対策について、現在の科学的知見では「確度の高い地震の予測はできない」と明記した報告書をまとめた。東海地震を対象に1978年に制定された大規模地震対策特別措置法は、2〜3日以内の地震予知を前提として防災対応を実施する仕組みだったが、報告書を受けて菅官房長官は同日、「最新の科学的知見を生かした新たな防災対応の構築を図る」と表明。関係省庁が早急に取り組む方針を示した。
▶南海トラフ沿いでは、概ね100〜150年で大地震が繰り返し発生。南海トラフの広範囲を震源域とした昭和東南海地震(1944年)、昭和南海地震(45年)から70年以上が経過し、大規模地震の切迫性が高まっている。政府は最大クラスの地震・津波の場合、死者32万3000人の被害も想定。対策強化により被害の軽減を目指している。
▶想定震源域には静岡県の浜岡原発、愛媛県の伊方原発が立地する。東京電力福島第一原発事故により、日本の原発の安全神話は崩壊した。15年に原子力規制庁は原子力災害対策指針を改正。救急医療・災害医療を融合させ、広域にまたがる複合災害で発生した多数の傷病者に対応できる被ばく医療体制を目指しており、現在、原発立地・隣接道府県で体制整備が進む。
▶関係自治体と医療機関は今回の方針転換を踏まえ、改めて災害医療体制、原子力災害医療体制の点検や再検討が必要となるだろう。例えば福島第一原発事故では、入院患者や要介護高齢者の広域避難搬送に課題を残した。東日本大震災の教訓をくみ取り、最新の科学の成果と限界を踏まえた、実効性のある防災対応を講じる必要がある。

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