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分子診断を採用したWHO2016脳腫瘍分類【gliomaの診断分類には分子診断を重視する姿勢に】

No.4875 (2017年09月30日発行) P.54

吉本幸司 (九州大学脳神経外科准教授)

飯原弘二 (九州大学脳神経外科教授)

登録日: 2017-09-30

最終更新日: 2021-01-07

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これまで神経膠腫(glioma)の診断に関しては,形態診断に基づいた診断分類が行われてきたが,2016年にWHO脳腫瘍分類の改訂が行われ,gliomaの診断分類に大きな変革がもたらされた1)

これまでの分類では,びまん性星細胞腫(diffuse astrocytoma)と乏突起神経膠腫(oligodendroglioma)は別々の範疇に分類されていたが,今回は同じ範疇に分類された。その代わり,限局性星細胞腫と呼ばれている毛様性星細胞腫は,びまん性星細胞腫とは別の範疇に分類された。最も大きな変更点は,gliomaの診断に分子分類が必須になったことである。その中でもIDH遺伝子変異は,gliomaの発生初期に起こる遺伝子変化であり,解析が必須となった。astrocytomaはこの遺伝子変異の有無により,astrocytoma,IDH-mutantまたはastrocytoma,IDH-wildに大別される。また,oligodendrogliomaの診断には染色体1番短腕(1p)と19番長腕(19q)の相互転座により引き起こされる1p/19qの共欠失が必要となり,oligodendroglioma,IDH-mutant and 1p/19q codeletedと診断名に分子診断を付加する統合診断が採用された。

分子診断ができない場合や不十分な結果しか得られない場合は「NOS(not otherwise specified)」と記載することになっており,今後の問題点となっている。いずれにせよWHO2016脳腫瘍分類では,これまでの形態診断中心から分子診断を重要視する姿勢に方向転換したと言える。

【文献】

1) Louis DN, et al:Acta Neuropathol. 2016;131 (6):803-20.

【解説】

吉本幸司*1,飯原弘二*2  *1九州大学脳神経外科准教授 *2同教授

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