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新基金、地域連携に重点配分を[お茶の水だより]

No.4688 (2014年03月01日発行) P.12

登録日: 2014-03-08

最終更新日: 2017-09-08

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▶2025年の医療提供体制の将来像に向け、明確な方向性が示された2014年度診療報酬改定。地域包括ケアシステムの構築を図るため、“地域連携”の重要性が改めて強調された。
▶多くの医療機関が“地域連携”の名を冠し、退院調整・支援を行う部門を立ち上げて久しい。2008年度改定では「退院・転院後の療養を担う保険医療機関等との連絡調整や適切な介護サービスの導入に係る業務等の退院調整を行う」などを要件とする退院調整加算を新設、12年度改定では評価の充実が行われた。しかし全日病の調査では、退院調整実施率は13年度7~9月期の平均で17.1%。この結果だけで連携の成否を判断することはできないが、高い数字と言えないことは確かだろう。
▶現場から聞こえるのは「病院医師や看護師が情報を持っておらず、地域の各診療所の特徴が把握できていないため連携がスムーズにいかない」という声。厚労省が2009~13年度に実施した地域医療再生基金でも、一部が“顔の見える”関係構築を目的として各都道府県に交付されたが、長年指摘されてきた課題は解消されていないようだ。
▶7対1病床の削減、地域包括ケア病棟の新設、主治医機能の強化など、今改定は機能分化への誘導色が強い。中でも地域包括ケアの柱の1つである在宅医療については同一建物訪問時の大幅な減算規定が設けられ、施設系在宅から撤退するケースが急増するとの指摘もある。これに伴い地域の医療提供体制は短期間で変化を余儀なくされ、各医療機関が今以上に相互の機能を把握することが困難になることも懸念される。
▶さらに今改定では入院医療でアウトカム評価重視の観点から在宅復帰率が要件とされ、地域連携を担う部門の重要性は増す。しかし現行の退院調整加算は看護師が病棟兼任でも算定できるため、人員体制が十分とは言えない医療機関も多く、専従職員の確保など組織の拡充が必要になるケースも予想される。
▶医療提供体制の再構築に向けた財政支援制度として創設される基金の対象事業は間もなく明らかになる。かつての地域医療再生基金と同様に“地域連携”も対象分野とされているが、904億円という限られた予算を有効活用するためには“顔の見える”関係構築という曖昧なものではなく、直接的な効果の期待できる事業への重点配分が必要だろう。

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