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【一週一話】成人特有の食物アレルギーの特徴

No.4689 (2014年03月08日発行) P.50

佐野晶代 (藤田保健衛生大学医学部皮膚科学講座)

松永佳世子 (藤田保健衛生大学医学部皮膚科学講座教授)

登録日: 2014-03-08

最終更新日: 2017-09-06

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食物アレルギーとは,原因食物を摂取した後に免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象をいう1)。食物アレルギーは多くが加齢により耐性を獲得し,成人の有病率は小児よりも低い約1%程度と推察されている1)。しかし,食物依存性運動誘発アナフィラキシーや口腔アレルギー症候群のように,小児期には稀で,成人になって発症する食物アレルギーもある。

特徴・臨床症状

(1)病型分類

『食物アレルギーの診療の手引き2011』では,5つの臨床型に分類している。①新生児・乳児消化管アレルギー,②食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎,③即時型症状,即時型アレルギーの特殊型として④食物依存性運動誘発アナフィラキシー,⑤口腔アレルギー症候群,である。うち,成人で見られる③〜⑤に関して述べる(表1)。

a.即時型症状:食物摂取後,数分〜数時間内に蕁麻疹やアナフィラキシーを生じる。即時型食物アレルギーの原因食品は年齢とともに変化する。20歳以上の成人では魚介類が最も多く,エビ,ソバと続く。乳児期からのものに比べ,幼児から成人で新たに発症したものは耐性を獲得しにくいとされている。

b.食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA):特定の食物を摂取した後,1〜4時間以内に運動負荷がかかることにより,蕁麻疹やアナフィラキシーを生じる。アスピリン内服により,さらに症状が悪化することがある。日本では小麦によるものが多く,エビやカニ,イカなども原因となりうる。

c.口腔アレルギー症候群(OAS):1987年,Amlotらにより初めて提唱された疾患概念であり,食物摂取15分以内の口腔粘膜を中心とした症状,IgE抗体を介した即時型アレルギーとして生じる蕁麻疹や腹部症状など,一連の症状を指したものである2)。花粉症に伴う新鮮な果物や野菜に対するOASが多く見られ,花粉–食物アレルギー症候群(PFAS)と呼ばれている。花粉を吸入することで感作が成立し,その後,花粉に含まれる蛋白抗原に交叉反応性を示す食物抗原を摂取した際に,OAS症状が誘発されると考えられている。

OAS症状にとどまらず,蕁麻疹,消化器症状,呼吸器症状,アナフィラキシー症状を伴うことがある。PFASでは複数の野菜や果物にアレルギーを有することが多く注意を要する(表2)。

またラテックスアレルギーの患者の一部は,クリやバナナ,アボカドなどの植物性食品を摂取した際にOAS症状や蕁麻疹,アナフィラキシーを訴えることがあり,ラテックスフルーツ症候群と呼ばれている。PFASと同様に,ラテックス抗原により感作が成立し,その後,食物抗原との交叉反応性により食物アレルギーが誘発されると考えられている。

(2)感作経路

これまで食物アレルギーの発症機序は,経消化管感作によるものと,環境抗原に感作後,交叉反応により症状が誘発されるものがあるとされていた。しかし近年,加水分解小麦含有石鹸使用後に生じた小麦アレルギーが多発したことから,経皮・経粘膜感作による食物アレルギーが注目されている。まず接触部位に接触蕁麻疹を生じ,その後,経口免疫寛容が破綻し,食物アレルギーを発症すると考えられている。わが国では小麦以外にも食物成分を含有した香粧品によるものや,食物を扱う職業で感作された症例の報告もある。

検査

検査法には,皮膚テスト(プリックテスト,スクラッチテスト,皮内テスト),抗原特異的IgE抗体測定,ヒスタミン遊離試験,負荷試験などがある。

治療・生活指導

現在食物アレルギーの予防的治療は,原因食物の摂取を避けることが中心となっている。

患者への生活指導として,原因食物の摂取を避けること,食物によっては交叉反応があること,経皮感作を予防するために,皮膚のバリア機能を保ち,食物成分を含む香粧品の使用に気をつけることを説明する。

また,予期せぬ蕁麻疹や呼吸困難に備え,抗ヒスタミン薬や経口ステロイドを処方し,常時携帯するように指導する。さらにアナフィラキシーショックを起こす危険性が高い場合にはアドレナリン自己注射薬(エピペン)を処方する。その際は,使用するタイミングや使用方法について詳細に説明し,使用後は直ちに医療機関を受診するように指導する。



●文 献
1) 日本アレルギー学会:アレルギー疾患診断・治療ガイドライン2010. 協和企画, 2010, p332.
2) 松永佳世子:皮膚疾患最新の治療2005─2006. 瀧川雅浩, 他 編. 南江堂, 2005, p10.
3) 猪又直子, 他:Visual Dermatol. 2012;11(3):272-9.

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