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地方創生の中の医療・介護:雇用提供と社会参加促進に効果あり?─医療経済フォーラム・ジャパン公開シンポより

No.4776 (2015年11月07日発行) P.14

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-09

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地方は東京一極集中と若年女性の減少で「消滅」、東京圏は後期高齢者の増加で「介護難民」が彷徨う。そんな将来を回避すべく政府が掲げる「地方創生」をテーマに、10月22日に都内で開かれたシンポジウムの様子を紹介する。

シンポの基調講演を務めたのは、全国896市区町村が“消滅”の危機に瀕していると警告し、「地方創生」の議論の端緒を開いた増田寛也元総務相。

増田氏は「今の社会は若者、子育て世代、女性にとって非常に厳しい」と述べ、女性と若い世代を人材として活用する必要性を強調。また、地方創生に向けた地方自治のあり方について、岩手県知事を務めた経験から、「東大や医学部への進学率など東京基準の価値観から脱却し、地方に残ることに価値を見出せる政策を打ち出すことが必要だ」とした。

地方創生は「コミュニティの作り直し」

そもそも「地方創生」とは何なのか。演者として登壇した内閣官房まち・ひと・しごと創生本部の山崎史郎地方創生総括官は、地方創生は、東京一極集中を是正するための「地方移住の受け皿づくり」ではないと説明。政府が検討する「コンパクトシティ」や「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」などの構想は、高齢者が希望に応じて地方や“まちなか”に移住し、必要な時に医療・介護を利用できる地域づくりを目指すもので、「都市部の団地などを含めたコミュニティの作り直し」が地方創生の要だという。

社会参加が介護予防に

それでは、医療・介護は「コミュニティの作り直し」に寄与できるのか。これについて、千葉大予防医学センターの近藤克則教授は、自治体と共に実施した、高齢者の社会参加に関する複数の調査研究の結果を紹介。所属する老人クラブや趣味サークルの数が多いほど、転倒、認知症などのリスクが低く、要介護認定率も低いことが判明したという。介入研究でも同様の結果が確認された。

近藤氏によると、これらの研究結果は予防医学的な視点からの政策介入で、高齢者を地方創生の中心的存在に転換できることを示唆しているという。

地方では医療・介護に若い人材が集まる

「地方の中小病院は地域と運命共同体」─。こう主張したのは、茨城県常陸大宮市で病院グループを経営する日本医師会の鈴木邦彦常任理事。

鈴木氏は、地方では若い人材が医療機関・介護施設に集まりやすく、職場結婚につながりやすいと指摘。経営者が産休などを取りやすい環境さえ作れば「診療報酬・介護報酬が上がらなくても、職住近接なので共働きで十分生活できる」という。

近藤氏、鈴木氏の主張について、山崎氏は「医療・介護が地方創生に一定の効果をもたらすことは間違いない」としながらも、「医療・介護はあくまでコミュニティの上に成り立つ上部構造。その前に下部構造の『まち』を、誰の責任で、どの程度作るのか考え直す時期に来ている」と訴えた。


医療・介護さえあれば「地方消滅」を免れうるという単純な話ではないのは確かだろう。しかし、地方において若い世代や女性を「雇用」でつなぎとめる役割、そしてコミュニティに人を巻き込むきっかけを提供する役割には期待が持てそうだ。(F)

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