株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

(1)SGLT2阻害薬の副作用とその対策 [特集:安全に使いこなすSGLT2阻害薬]

No.4754 (2015年06月06日発行) P.20

植木浩二郎 (東京大学大学院医学系研究科分子糖尿病科学講座特任教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-17

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • next
  • 服用開始直後に起こる循環血漿量低下に対して,十分に水分を摂るよう患者に指示する

    食事や飲水ができないシックデイの際には,SGLT2阻害薬の休薬指示をする

    スルホニル尿素(SU)薬やインスリンとの併用開始の際は,低血糖防止のためにあらかじめそれらの薬剤の減量を行う

    1. SGLT2阻害薬とは

    SGLT2阻害薬は,近位尿細管からのグルコース再吸収を抑制して尿糖量を増加させることによって血糖を降下させる作用を有する薬剤である。本剤服用下では,このような尿糖増加による浸透圧利尿やNa再吸収抑制により,循環血漿量の減少が起きる。さらに,インスリン値の低下やグルカゴン値の上昇に伴う脂肪組織からの脂質や骨格筋からの蛋白質の動員など,当初予想されていた以上に体内では様々な変化が生じているようである。
    上市されたばかりの薬剤であり,副作用については必ずしも明らかではないが,本稿では,SGLT2阻害薬が持つ薬理作用の特性やこれまでの臨床試験および市販後調査における有害事象報告から,懸念される副作用とその対策について概説する。

    2. SGLT2阻害薬において現時点で認められている副作用とその予防

    どのような薬剤にも一定の副作用があり,使用に際して注意が必要であることは言うまでもない。SGLT2阻害薬には,一般的な薬剤の副作用のほかに,本剤に特有の副作用・懸念事項があると考えられる(図1)。大別すると,①血糖降下に伴う副作用,②尿糖増加に起因する尿路・生殖器系の副作用,③尿量や尿中電解質の変化による血行動態の変容がもたらす副作用,④エネルギー代謝の変化に伴う副作用,などが考えられる。現在までの臨床試験や市販後調査における有害事象報告から,そのほかの機序による副作用,上記の本剤の副作用と考えられるものを概説する。ただし,今のところ本剤の服用との確定的な因果関係が明らかでないものがあることや,副作用と思われる個々の事象の発生頻度がどの程度であるのかについては不明であることに留意すべきである。
    また,日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」による「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」(http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=48)も参照されたい。

    残り4,280文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top