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脳転移に対する全脳照射の適応や功罪 【定位照射との併用で再発率が1/3に低下。ただ認知機能が低下する恐れがある】

No.4829 (2016年11月12日発行) P.57

神宮啓一 (東北大学大学院医学系研究科 放射線腫瘍学分野教授)

青山英史  (新潟大学大学院医歯学総合研究科 腫瘍放射線医学分野教授)

登録日: 2016-11-10

最終更新日: 2021-01-06

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  • 脳転移に対する全脳照射の適応や功罪について,新潟大学・青山英史先生のご回答をお願いします。

    【質問者】

    神宮啓一 東北大学大学院医学系研究科 放射線腫瘍学分野教授


    【回答】

    転移性脳腫瘍は癌患者のおおよそ4人に1人に発生する,最も頻度の高い悪性脳腫瘍です。原発臓器としては肺癌が最も多く,乳癌がそれに続きます。従来,転移性脳腫瘍を発症した患者の予後は等しく不良と考えられていましたが,予後は患者によって大きく異なり,また予後に影響を及ぼす因子も原発臓器により異なることなどがしだいに明らかになってきました。転移性脳腫瘍治療の主体は放射線治療ですが,その照射方法には転移病巣にピンポイントで高線量の放射線を照射する定位照射と,脳全体に照射する全脳照射の2つあり,近年は全脳照射を行わずに定位照射のみを行う施設が増えています。しかしながら定位照射のみを行い全脳照射を省略した場合,脳転移が高率に再発することが問題であり,どのような患者に定位照射に加えて全脳照射を行ったほうがよいのか明らかにされていませんでした。日本放射線腫瘍学研究機構が行った臨床試験JROSG 99-1は,定位照射単独治療と定位照射と全脳照射の併用治療を比較した世界で初めての無作為割り付け試験であり,2006年の報告では,「全脳照射を省くと脳転移再発は有意に多いが,両治療群間で生存率に有意な差はない」としました1)

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