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「データに基づく地域の将来像予測がカギ」 - 東京圏の医療・介護提供体制 [高橋泰氏講演]

No.4814 (2016年07月30日発行) P.10

登録日: 2016-07-30

最終更新日: 2016-10-30

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【概要】「東京圏(東京都、埼玉、千葉、神奈川の各県)」の医療・介護提供体制は、75歳人口が倍増する2040年にかけてその負担増に耐えられるのか─。高橋泰氏(国際医療福祉大)が東京圏の医療・介護の現状と将来予測をテーマに25日、講演した。

高橋氏(写真)は日本創成会議(増田寛也座長)のメンバーで、昨年には2次医療圏ごとの医療・介護の“余力”に着目したレポートをまとめ、話題となった。
東京圏の医療について高橋氏は、「東京・横浜地区は人口当たり医師数が全国で最も多い一方、周辺部は最も少ないことが特徴」と指摘。「周辺部の住民の多くは1955年から70年にかけて地方から流入した年間約40万人にも上る当時の若者。これまでは有病率が低く、東京の病院の利用も多かったため何とか持ちこたえてきたが、今後15年で高齢者危機が顕在化する可能性は高い」と分析した。
一方、介護については医療と異なり、「施設定員が不足する東京都区部の収容能力を多摩、埼玉、神奈川県の周辺地域でカバーしている」と説明。しかし後期高齢者が急増する25年になると「周辺地域でも収容能力がマイナスになり、東京都区部を中心に介護難民の発生が懸念される」と述べ、地域の医療・介護提供体制のあり方を考える上で、「人口動態を踏まえた具体的なデータに基づき、いかに地域の将来像を正確に予測できるかがカギになる」と強調した。

●一都三県での行政対応が重要
こうした予測を踏まえ、高橋氏は回避策として、(1)医療・介護サービスの人材依存度の引下げ、(2)東京圏の特性に応じた地域医療介護体制の整備と高齢者の集住化、(3)一都三県をカバーする行政対応の確保、(4)希望に沿った東京圏の高齢者の地方移住促進─の4点を挙げた。中でも、都県を越えて医療・介護サービスが利用されている現状から、(3)の重要性を強調。東京圏全体の高齢者について地域医療介護体制の整備と住まいの確保に関する広域的な対策を盛り込んだ「東京圏高齢者ケア・すまい総合プラン(仮称)」策定が不可欠と訴えた。

●「医療費の多寡と死亡率に相関なかった」
このほか高橋氏は2次医療圏ごとのデータ分析の重要性を強調。2次医療圏別の医療費(13年度)では全国最高の熊本県芦北(50万4474円)と最低の沖縄県八重山(22万4459円)では約2.25倍の開きがあり、政府の『骨太方針2016』では「医療費の地域差半減」に向けた取り組みについて今夏をメドにまとめることを求めている。高橋氏は地域別医療費の多寡と死亡率の相関について、人口構成の違いを除いて死亡率を比較する「標準化死亡比」(用語解説)を用いた分析を行い、「見事なまでに相関がなかった」ことを明らかにした。
●用語解説
【標準化死亡比】
基準死亡率(人口10万対の死亡数)を対象地域に当てはめた場合に、計算により求められる死亡数(集団の年齢階層別死亡率とその階層の人口を掛け合わせたものの総和)と実際に観察された死亡数を比較するもの。人口構成の違いを除いた死亡率を比較できる。

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