株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

認知症は否定されるが,レビー小体型認知症(DLB)の症状がみられる患者にはどう対処すればよいか?

No.4817 (2016年08月20日発行) P.63

小阪憲司 (横浜市立大学名誉教授)

登録日: 2016-08-20

最終更新日: 2016-11-09

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

81歳,男性。約10年前から大声を出し,手足をばたつかせて犬を蹴るような身振りをするレム睡眠行動障害が,約5年前から嗅覚障害が生じました。最近の123I-MIBG心筋シンチグラフィーで,取り込みが著明に低下しています。幻視はなく,改訂長谷川式簡易知能評価スケール28点。レビー小体型認知症の前駆期と診断すべきですか,他疾患と考えるべきですか。前者なら予防的にドネペジル塩酸塩などを投与すべきですか。
横浜市立大学名誉教授の小阪憲司先生にお願いします。

(質問者:石川県 Y)



【回答】

81歳の方で,約10年前からレム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder:RBD),約5年前から嗅覚障害がみられたとのことで,この時点でレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)のごく初期を疑うべきですが,最近のMIBG心筋シンチグラフィーにて心臓でのMIBGの取り込み低下が認められたということは,ますますDLBが強く疑われます。幻視は認められず,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa’s dementia scale for revised:HDS-R)が28/30点で,認知症は認められませんが,ご指摘のように,この時点でDLBの可能性が高くなります。
認知症がないのにDLBというのはおかしいと思われる人が多いと思いますが,DLBという病名が問題なのです。私が1984年に提唱したびまん性レビー小体病(diffuse Lewy body disease:DLBD)1))としておけば問題はなかったのですが,DLBという病名が1995年の国際ワークショップで紹介されたので,その名称が使用されています。ただ,2006年のDLB国際ワークショップの診断基準改訂版では中心症状が認知症となっており,認知症がないと診断できないことになります。しかし,そこに「早い時期には認知症は必ずしも認められず,あとになってから明らかになる」と明記されていることにご注意下さい。
DLBでは初期には認知症がないことが多いのです。ですから,この時期にDLBと診断することによる弊害が少なくありません。認知症がないときには,「レビー小体病(Lewy body disease:LBD)」と診断して,本人や家族に説明するのがよいのです。ただし,DLBはこの時期に診断し,その後の認知症やBPSDなどの出現を予防する必要があります2)。そのためには,この時期にアリセプトRを投与すべきです。私たちの臨床治験によりDLBに対してアリセプトR(ドネペジル塩酸塩は不可)は,世界で初めて効能・効果の承認を取得しました(文献2)。
DLBでは早い時期,すなわち認知障害が目立つ前にアリセプトRを投与すべきで,認知症やBP
SDの予防を行うことが重要です。

【文献】

1) Kosaka K:J Neurol. 1990;237(3):197-204.

2) 小阪憲司, 他:精神医. 2014;56(3):191-7.

【文献】

▶ McKeith IG, et al:Neurology. 2005;65(12):1863.

▶ 小阪憲司:Modern Physician. 2006;82(12):1869-71.

【回答者】

小阪憲司 横浜市立大学名誉教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top