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多発性筋炎/皮膚筋炎に合併する間質性肺炎における予後因子 【予後不良因子は,急性/亜急性型ILD,CADM診断,FVC低値,抗MDA5抗体陽性,フェリチン高値など】

No.4814 (2016年07月30日発行) P.62

藤澤朋幸 (浜松医科大学第二内科)

登録日: 2016-07-30

最終更新日: 2018-12-03

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【Q】

多発性筋炎/皮膚筋炎(polymyositis:PM/dermatomyositis:DM)に合併する間質性肺炎における予後因子にはどのようなものがありますか。浜松医科大学・藤澤朋幸先生のご回答をお願いします。
【質問者】
白井敏博:静岡県立総合病院呼吸器内科部長

【A】

PM,DM,筋症状に乏しい皮膚筋炎(clinically amyopathic dermatomyositis:CAD
M)は,20~40%に間質性肺疾患(interstitial lung disease:ILD)を合併することが知られています。ILDの存在はPM/DM/CADMにおける予後不良因子となることから,実臨床ではILDに対する適切な評価が求められます。また,PM/DM/CADM-ILD(PM/DM/CADM-associated ILD)は,多彩な臨床像や臨床経過を呈することが知られています。
基礎にある膠原病診断(PM or DM or CAD
M),ILDの発症様式(急性/亜急性型 or 慢性型)により,その臨床像は異なりますし,近年は様々な筋炎特異的・関連自己抗体の有無による相違も検討されています。PM/DM/CADM-ILD診療に際して,いかなる症例が重症化し予後不良となりうるかを診断時に予測し,適切な治療介入を実施することはきわめて重要と言えます。
私たちが実施したPM/DM/CADM-ILD 114症例における後ろ向き解析では,急性/亜急性型ILD(5年生存率52%)は慢性型ILD(同87%)と比較して有意に予後不良でした。また,PM-ILD,DM-ILD,CADM-ILDの5年生存率はそれぞれ82%,71%,59%で,CADM-ILDの予後が最も悪い結果でした。多変量解析では,急性/亜急性型ILD,高齢,FVC低値,CADM診断は,PM/DM/CAD
M-ILDにおける独立した予後不良因子となっていました。
筋炎特異的抗体として,特に抗MDA5(anti-melanoma differentiation-associated gene 5)抗体と抗ARS(anti-aminoacyl-tRNA synthetase)抗体が注目されています。抗MDA5抗体陽性のDM/CADM-ILD症例は,致死率の高い急速進行性ILDを高頻度に合併し,また筋症状やCPK上昇に乏しいこと,フェリチン高値などが特徴的とされています。抗MDA5抗体陽性やフェリチン高値(>500ng/mL)は,DM/CADM-ILDにおける予後不良因子として報告されています。一方,抗ARS抗体陽性PM/DM/CADM-ILD症例は,陰性のそれと比較して予後良好であったと報告されており,抗ARS抗体陽性は予後良好マーカーとなりうることが指摘されています。
結論として,PM/DM/CADM-ILDの予後不良因子には,急性/亜急性型ILD,CADM診断,FVC低値,抗MDA5抗体陽性,フェリチン高値などが挙げられ,実臨床ではそれらを総合的に判断することが大切です。一方,これまでの報告はすべて後方視的解析であり,今後は前向き研究などによるさらなるエビデンスの構築が望まれます。
【参考】
▼ Fujisawa T, et al:PLoS one. 2014;9(6):e98824.
▼ Nakashima R, et al:Rheumatology(Oxford). 2010;49(3):433-40.
▼ Tanizawa K, et al:Respir Med. 2013;107(5):745-52.
▼ Hozumi H, et al:PLoS one. 2015;10(3):e0120313.

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