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乳幼児巨大肝血管腫 【血管性病変の新たな分類の提唱で,治療選択やフォローアップに変化】

No.4814 (2016年07月30日発行) P.57

黒田達夫 (慶應義塾大学小児外科教授)

登録日: 2016-07-30

最終更新日: 2016-10-30

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肝血管腫のうち,病変が巨大な症例やびまん性の症例では,新生児期から乳幼児期にかけて高拍出性心不全,呼吸循環障害,消費性凝固障害などの重篤な症状を呈し,時に致命的な経過をとる。近年,これら重篤な症状を呈する肝血管腫を独立した臨床群として扱おうとする考え方が提唱され,普及しつつある(文献1)。
従来,治療はステロイド投与が第一選択で,α-インターフェロンも使用されていたが,ステロイドの効果がほとんどみられない症例も多く,α-インターフェロンの有効性に関しては未確立である。近年,一部の症例でβ遮断薬のプロプラノロールが著効を示すことが報告され(文献2),ステロイドに次ぐ治療薬として重要視されている。
“血管腫”と総称される病変の中に,血管内皮の腫瘍性増殖と血管形成異常の2つの疾患群が含まれることが指摘されており,こうした概念をもとに血管性病変に対する国際分類(International Society for the Study of Vascular Anomalies:ISSVA)が提唱された。ステロイドやプロプラノロールが有効であるものは,このうち腫瘍性のものであると考えられている。乳幼児の巨大肝血管腫症例の中には,急性期の症状を乗り切ったあとも,肝内門脈大循環シャント血流の増加などから肝機能障害が進行し,肝移植を要する症例もみられる。有症状の肝血管腫に対する疾患概念,治療の選択,フォローアップに変化がみられている。

【文献】


1) Christison-Lagay ER, et al:J Pediatr Surg. 2007;42(1):62-7.
2) Leaute-Labreze C, et al:N Engl J Med. 2008;358(24):2649-51.

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