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指と指の間は解剖学的に何と呼ぶ?

No.4809 (2016年06月25日発行) P.60

加藤直樹 (埼玉成恵会病院・埼玉手外科研究所副所長)

登録日: 2016-06-25

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

指と指の間(伸筋腱と伸筋腱の間)の「また」とも言うべき部分の,いわゆる水かきに相当する部位の名称を教えて下さい。 (兵庫県 K)

【A】

指と指の間を指間腔(interdigital space)と呼び,母指と示指の間を第1指間腔と定め,尺側に行くに従って第2,第3,第4指間腔と呼びます。また,この指間腔で,各指の「また」とも言うべき部分に張っている薄い皮膚で形成される部分を「指間みずかき」(interdigital web)と呼びます。
同部がよく発達し,大きな「みずかき」を形成している代表が水禽であり,我々人間では発達が悪いとされています。この「指間みずかき」を矢状断面でみると,背側の皮膚は掌側に向かって約45度の傾斜(dorsal slope)を有しており,同部の皮膚は移動性に富み,性状は手背,指背の皮膚に類似していると言われています。
こうした解剖学的特徴を持つ「指間みずかき」ですが,実際には「指間部」とのみ呼ばれることが多いように思われます。なぜなら,指間分離が必要とされる合指症や熱傷後の瘢痕拘縮による指間部の形態的異常を手外科領域では「みずかき形成」と呼ぶからです。
指間部の背側の皮膚が原因となる指間拘縮を「背側みずかき形成」と呼び,掌側の皮膚が原因となるものを「掌側みずかき形成」と呼びます。そして,こうした形態的異常に対して,これまで様々な治療が行われ,良好な結果が報告されてきました。つまり「みずかき形成」と呼ぶ場合,治療が必要とされる何らかの形態的異常を示すことが多いため,正常なほうの「指間みずかき」については「指間部」とのみ呼ぶことが多いのだと思われます。

【参考】


? 上羽康夫:手 その機能と解剖. 改訂5版. 金芳堂, 2010, p60-77.
? 児島忠雄:手の皮弁手術の実際. 克誠堂出版, 1997, p60-86.

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