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陰茎とos penisの関係

No.4729 (2014年12月13日発行) P.57

米澤智洋 (東京大学大学院農学生命科学研究科獣医臨床病理学研究室准教授)

登録日: 2014-12-13

最終更新日: 2016-12-12

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【Q】

イタチやイヌのos penis(陰茎骨)が,いつもは皮下にしまわれているのにerectionのときに押し出されてくる仕組みを。
ヒトで言えば,陰茎海綿体の間にあるのか,それとも陰茎海綿体の後ろ(膀胱,体幹寄り)にあるのか。イタチのものをみると一端が軽いうずまき状になっているが,これらが近位なのか遠位なのかなどについて。 (鹿児島県 H)

【A】

陰茎は繁殖成功度に直接的に関わるため淘汰圧が大変高く,その形状は種によって様々である。多くの動物では,ヒトのような自由に動く陰茎を持たず,陰茎根,陰茎体は腹壁皮膚で覆われて腹壁に引きつけられており,亀頭のみが包皮中に遊離している。
イヌやウマの陰茎は血管筋肉型に分類され,ヒトと似た仕組みで勃起する。すなわち,発達した陰茎海綿体,亀頭海綿体に血液が充填されるとともに,球海綿体筋および坐骨海綿体筋の収縮によりうっ血が持続することで勃起し,包皮から亀頭が露出する。
ウシ,ヤギ,ブタなどの陰茎は弾性線維型で,海綿体の発達が悪く,勃起による膨張はあまりみられない代わりに白膜が非常に厚いため,勃起せずとも一定の硬度が保たれている。普段は陰茎がS字状に折りたたまれることで亀頭は包皮中に格納されているが,勃起時には陰茎後引筋が弛緩し,陰茎S状曲が伸張することで亀頭が包皮外に露出する。
陰茎骨は,上記以外の動物の,主に亀頭の尿道背側面に形成される内臓骨で,陰茎同様,種によって多彩な形状が認められる。食肉目,げっ歯目,翼手目,霊長目(ヒトを除く)などの多くの種に存在する一方,ウサギ目,偶蹄目,奇蹄目,ヒトなど,陰茎骨を持たない種もまた数多く存在する。
イヌでは,陰茎骨は陰茎海綿体遠位端の中隔から亀頭先端付近にわたって形成される。腹面には基部から尖端へ向けて尿道を入れる溝がある。イタチやテンなどでは亀頭尖端や尿道突起の形状に合わせて陰茎骨の遠位先端部が湾曲していたり二股にわかれていたりする。ラットでは陰茎骨は近位骨と遠位骨の2つにわかれている(図1)。近位骨は近位端に硝子軟骨を有する膜性骨として発生し,遠位骨は間葉組織から分化した線維軟骨原基から発生し骨化する(文献1)。
陰茎骨の機能的役割についての議論は推測の域を出ないものが多いが,少なくとも交尾の際に挿入の一助にはなると考えてよいだろう。実験的には,陰茎骨の形成不全を起こしたマウスが挿入不能に陥ることが報告されている(文献2)。ヒトでも陰茎内に骨が形成された例が報告されているが,異所性の化骨形成とみなされるもので,むしろ挿入の妨げになるようである(文献3)。

【文献】


1) Yonezawa T, et al:Biol Reprod. 2011;85(1): 105-12.
2) Dolle P, et al:Cell. 1993;75(3):431-41.
3) Sarma DP, et al:Urology. 1990;35(4):349-50.

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