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臓器重量について

No.4765 (2015年08月22日発行) P.50

臼元洋介 (九州大学法医学)

池田典昭 (九州大学法医学教授)

登録日: 2015-08-22

最終更新日: 2016-10-26

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解剖は医学の基礎であり,被虐待児の胸腺の萎縮,心不全による心重量増加など,臓器重量が疾患や病態を反映する場合があることから,臓器重量の基準値を知ることは重要である。臓器重量について,国内外の様々な報告があり,性別や身長,体重,体表面積,年齢などと相関があるとされており,年齢ごとに基準値が報告されていることが多い(文献1,2)。
法医解剖における死後経過時間が24時間以内の剖検例の臓器重量について行った検討では,年齢・性別・体表面積を用いて臓器重量を推定する式が作成されている(文献3)。これらの式は心臓が最も高い精度を示し(自由度調整R2=0.95),脾臓が最も低かった(0.50)。また,「死後経過時間」を独立変数に加えて推定式を作成したところ,心臓・肝臓以外の臓器では変数として採用された。特に肺では「死後経過時間」の係数は正であり,死後24時間以内では時間の経過とともに肺重量が増加している可能性が示唆された。ほかの臓器も含め,死後時間の経過とともに臓器重量が変化している可能性がある。
2014(平成26)年度の日本法医学会による課題調査は「法医剖検例の臓器計測値」である。1992年にも同様の調査が行われており(文献1),前回と比較してどのような違いがみられるのか,報告が待たれる。

【文献】


1) 日本法医学会課題調査委員会:日法医誌. 1992;46(3):225-35.
2) Molina DK, et al:Am J Forensic Med Pathol. 2012;33(4):362-7.
3) Usumoto Y, et al:Acta Crim Japon. 2015;81(2):51-6.

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