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卵巣チョコレート嚢胞に対する外科治療と術後卵巣予備能 【血清抗ミュラー管ホルモン値の測定は術式の選択や不妊治療の優先順位を考慮するために有用な検査】

No.4797 (2016年04月02日発行) P.53

熊切 順 (順天堂大学産婦人科准教授)

登録日: 2016-04-02

最終更新日: 2016-10-26

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子宮内膜症の一病態である卵巣チョコレート囊胞は,月経困難症などの症状のみならず,不妊症の要因となる。卵巣チョコレート囊胞により妊孕性が低下する理由には,腹腔内の炎症性変化のみならず,正常卵巣実質の線維化による卵巣予備能の低下が挙げられる。
過去より,卵巣チョコレート囊胞を有する不妊症患者に対しての治療法として外科的治療が行われてきた。その外科的治療法には卵巣囊胞摘出術,囊胞壁焼灼術,囊胞開窓術のいずれかが選択されるが,これらのうち根治性の高い嚢胞摘出術が選択される機会が多い。しかし,囊胞摘出術は囊胞壁の正常卵巣からの剥離により正常卵巣組織も同時に剥奪され,術後卵巣予備能の低下は必須とされる。
卵巣予備能の評価法として,卵巣内の卵胞数を反映する血清抗ミュラー管ホルモン(AMH)値の測定が,その安定性と再現性の高さから有用とされている。血清AMH値は年齢により減少し,卵巣チョコレート囊胞を有する症例では疾患自体により低下する。
また,両側卵巣に嚢胞を有する症例に対する嚢胞摘出術ではその減少は甚大である。このことは卵巣チョコレート嚢胞に対する外科的治療前に血清AMH値を測定することで,その背景と検査値から嚢胞摘出術による妊孕性への影響を術前より評価できることを意味する。よって,術前血清AMH値の測定は手術術式の選択や不妊治療の優先順位を考慮する情報として有用で,現在,自費負担で行われている本検査への保険適用が待たれる。

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