株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

くも膜下出血に出現する広汎性脱分極(CSD) 【CSDが病的な大脳皮質に到達すると血流は低下する】

No.4791 (2016年02月20日発行) P.52

杉本至健 (山口大学脳神経外科)

鈴木倫保 (山口大学脳神経外科教授)

登録日: 2016-02-20

最終更新日: 2021-01-06

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

くも膜下出血患者で広汎性脱分極(cortical spreading depolarization:CSD)が出現することが認知されるようになった。CSDは片頭痛との関連が注目されてきたが,脳血管障害や外傷などの病的環境下においても生じる神経細胞の脱分極の波である。波紋のごとく大脳皮質を毎分2~6mmの速度で血管領域に関係なく伝播する。CSDは皮質脳波の減衰としてもとらえられる(cortical spreading depression:皮質拡延性抑制)。脱分極の持続に伴い活動電位を発生できないことに起因する。
CSDには,以下のような機序が示されている。種々の有害刺激により局所神経細胞の脱分極が発生すると,電位依存性Ca2+チャネルの開口,細胞内Ca2+上昇,興奮性アミノ酸放出が誘導され,周囲の神経細胞が次々と脱分極を起こし,周囲に伝播する。CSDに伴い局所脳血流は変化する。正常な大脳皮質にCSDが到達すると,脱分極に伴い血流増加(spreading hyperemia)をきたす。しかし,病的な大脳皮質(実験的にはNOの供給低下と細胞外K+の上昇がある場合)にCSDが到達すると,抵抗血管は収縮し脳血流は低下する(spreading ischemia)。
くも膜下出血はまさにspreading ischemiaをきたしうる環境にある。つまり,溶血によりK+が放出され,ヘモグロビンはNOを消去する作用とNO合成酵素(NOS)を阻害する作用を有するためである。CSDは虚血に先行して出現する現象であるため,治療の標的とともにモニターとしても重要な役割を担う可能性がある。

【参考】

▼ Dreier JP:Nat Med. 2011;17(4):439-47.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top