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MRI用ガドリニウム造影剤と腎性全身性線維症 【腎機能障害例ではGd造影剤は原則として投与不可】

No.4781 (2015年12月12日発行) P.56

佐藤朋宏 (川崎医科大学放射線医学(画像診断1))

登録日: 2015-12-12

最終更新日: 2016-10-26

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MRIは身体各部の詳細な画像を入手でき,体内の異常構造や病変の視認性を高めるために,ガドリニウム(Gd)造影剤が一般的に使用される。Gdは生体内では毒性が強いため,造影剤溶液中では他分子とのキレートの形で安定保持されており,投与後は速やかに排泄される。従来,Gd造影剤は安全性の高い造影剤と認識され,2006年に腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis:NSF)との関連性が報告されるまでは,腎不全患者にも比較的安全な薬剤として使用されてきた。
NSFは腎不全患者,特に透析患者においてGd造影剤投与後に皮膚の腫脹や硬化,疼痛などで発症し,進行すると四肢関節の拘縮を生じる。現時点では確立された治療法はなく,死亡例も報告されている。NSFの原因については,腎機能障害が存在するとGd造影剤の排泄が遅延し,金属Gdがキレートから遊離して組織に沈着することで,線維化を引き起こすと考えられている。各Gd造影剤はそのキレートの構造から「直鎖」および「マクロ環」に大別でき,一般に直線型のものは安定性が低いため体内で分解されやすく,環状型のものは安定性が高いとされる。
NSF予防の観点から,Gd造影剤投与前の腎機能チェックは必須で,透析中,CKD(慢性腎臓病)ステージ4または5および急性腎不全の場合には原則として投与すべきではない。国内外から注意勧告,ガイドラインなどが発表され,適正使用が推進されたためNSFの発症は減少しており,現在では新たな症例はほとんど報告されていない(文献1)。

【文献】


1) Altun E, et al:Radiology. 2009;253(3):689-96.

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