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腎芽腫(ウィルムス腫瘍) 【外科的切除術が主体で,アクチノマイシンDなどの化学療法や放射線治療も有効

No.4779 (2015年11月28日発行) P.52

松藤 凡 (聖路加国際病院小児外科部長)

登録日: 2015-11-28

最終更新日: 2016-10-26

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腎芽腫(ウィルムス腫瘍)は神経芽腫,肝芽腫と並んで小児3大固形悪性腫瘍のひとつである。小児の腎腫瘍の90%がウィルムス腫瘍で,中胚葉の後腎芽組織に由来する腫瘍である。泌尿器疾患,無虹彩,片側肥大などの異常を伴っていることもある。一部の症例では,がん抑制遺伝子であるWT1(11p13領域),WT2(11p15領域)の異常が見つかっている。わが国では年間80~100例が発生し,頻度は出生数1.2~1.5万人に1人である。乳幼児に多く,5歳以下の症例が90%を占める。男女差は,同等かやや女児に多い。初発症状は腹部腫瘤や腹部膨隆が最も多く,腹痛,嘔吐,発熱,血尿,不機嫌などである。片側の腎動脈や大動脈周囲のリンパ節,肺に転移しやすいことが特徴である。
胸腹部X線,超音波,CT,MRIなどで原発巣の広がり,リンパ節転移,遠隔転移を調べる。両側の腎臓に発生することがある。また,腎静脈内に進展し,下大静脈や右房まで達することがある。
外科的切除術が治療の主体であるが,アクチノマイシンDなどの化学療法,放射線治療も有効である。米国ウィルムス腫瘍スタディ(NWTS)グループによる多施設共同研究が行われるようになってから,治療成績が向上し研究も進んだ。今日では,80%以上の2年無病生存率が達成されている。一方で,腎明細胞肉腫(CCSK),腎横紋筋肉腫様腫瘍(MRTK)などの予後不良な組織型があることも解明された。

【参考】

▼ 松藤 凡:スタンダード小児外科手術. 田口智章, 他, 監. メジカルビュー社, 2013, p316-8.
▼ 福澤正洋:標準小児外科学. 第6版. 伊藤泰雄, 監. 医学書院, 2012, p314-20.

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