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内視鏡手術の応用による頭蓋底病変に対する低侵襲手術

No.4772 (2015年10月10日発行) P.48

末永 潤 (横浜市立大学脳神経外科)

川原信隆 (横浜市立大学脳神経外科主任教授)

登録日: 2015-10-10

最終更新日: 2021-01-06

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頭蓋底手術は,開頭や再建法が複雑で長時間に及ぶ高侵襲手術である。近年では内視鏡を併用し,低侵襲の手術が行われるようになってきた。脳用の神経内視鏡は,鼻腔など小孔から挿入し脳を牽引せずに脳深部に到達でき,視野も広く深部でも近接して観察可能である。内視鏡単独の狭義の神経内視鏡手術と,顕微鏡下手術に併用し死角を補う内視鏡支援手術がある。
下垂体腫瘍では1977年にApuzzoが最初に内視鏡支援手術を報告し,97年にJhoら(文献1)が現在の経鼻的手法を確立し優れた摘出率を報告した。経鼻的な内視鏡の到達可能範囲は,篩骨篩板から前頭蓋底,トルコ鞍近傍部,斜台や脳幹前面,頭蓋内外の中頭蓋窩までだが,出血時の対処に困難も多く,内視鏡単独ではいまだ限界がある。良性腫瘍のみならず悪性腫瘍や血管病変への適応もある。下垂体腺腫,前頭蓋底の髄膜腫,傍鞍部の頭蓋咽頭腫,斜台の脊索腫などが代表的適応疾患となる。術後髄液漏は大きな合併症だったが,2006年にHadadらが血流のある鼻中隔粘膜弁で再建してから髄液漏の問題は激減した。術中ナビゲーション,自在な角度を容易に保つ内視鏡ホールディングアームの進歩も内視鏡手術の発展に寄与した。
今後は内視鏡モニターの3次元化と,軟性鏡の可動性の向上が技術革新によりもたらされるであろう。内視鏡を前後して立体視を補う現在の2次元画像より,試作機では手術時間の短縮など有用性が認められ,今後の発展が待たれる(文献2)。

【文献】


1) Jho HD, et al:J Neurosurg. 1997;87(1):44-51.
2) Lobo B, et al:Surg Neurol Int. 2015;6:82.

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