株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

肝芽腫(hepatoblastoma)の治療

No.4769 (2015年09月19日発行) P.56

松藤 凡 (聖路加国際病院小児外科部長)

登録日: 2015-09-19

最終更新日: 2016-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

子どもの肝臓に発生する悪性腫瘍(がん)のうち,最も頻度の高いものが「肝芽腫」と呼ばれる疾患である。小児悪性固形腫瘍としては,神経芽腫,ウィルムス腫瘍(腎芽腫)についで多く,小児悪性固形腫瘍の3~4%を占める。わが国の年間発生数は30~40人程度の稀な疾患で,大部分は乳幼児に発生する。低出生体重児(特に超低出生体重児)に高率に発症することが,わが国から報告された。
腹部腫瘤で発症することがほとんどで,肝由来の腫瘍で血清AFPが高値であることで診断できる。巨大なものが多く,また複数の肝領域にまたがるものも少なくない。初診時に既に肺転移をきたしているものもある。
治療は手術と抗癌剤を組み合わせて行う。腫瘍が外科的に完全に切除されたものの予後は良好である。このため,治療前に根治的切除の可能性をPRETEXT(pretreatment extent of disease)systemにて評価する(文献1)。一期的切除が可能であれば,手術後に化学療法を行う。病変が複数の領域に広がっていたり,肝門部の脈管浸潤や遠隔転移を認める症例では,化学療法を先行させる。原発巣が縮小し切除が可能になった時点で,二期的に切除する。残存した転移巣も切除する。
一期的切除,二期的切除を含めて,腫瘍が完全に摘出できた症例の予後は良好である(文献2)。一方で,腫瘍が摘出できなかった症例の予後には厳しいものがある。近年では,従来の肝切除が不可能でも肝外に病変を認めない症例に対して肝移植が行われるようになり,治療成績の向上が期待される。

【文献】


1) Brown J, et al:Eur J Cancer. 2000;36(11):1418-25.
2) Ortega JA, et al:J Clin Oncol. 2000;18(14):2665-75.

関連記事・論文

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top