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前庭神経鞘腫に対する治療の動向

No.4768 (2015年09月12日発行) P.52

川原信隆 (横浜市立大学脳神経外科主任教授)

登録日: 2015-09-12

最終更新日: 2021-01-06

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前庭神経鞘腫は原発性脳腫瘍の10%程度を占める頻度の高い腫瘍で,最近の画像診断の普及によって過去20年で10倍近くに頻度が増加している。小型腫瘍が多く発見されており,治療も機能温存に主眼を置いた方針が一般的であり,(1)経過観察,(2)手術,(3)定位放射線治療,のいずれかの選択がなされる。経過観察での増大率は約2mm/
年とされ,小型腫瘍であれば短期的な問題はなく,高齢者小型腫瘍では経過観察されることが多い。しかし,10年を超えると聴力は廃絶するため,聴力温存を希望する若年者では,治療の介入が必要となる。
手術に関しては,術中モニタリングが発達し,顕微鏡手術の成績が向上してきている。死亡率は1%以下,顔面神経温存率は95%以上であり,2cm以下の小型腫瘍であれば65%程度で聴力温存は可能で,聴力温存を希望する小型腫瘍では手術が選択されることが多い(文献1)。一方,定位放射線治療も3cm以下の小型腫瘍には可能であり,腫瘍制御率92%以上,顔面神経温存率98%と良好である。聴力温存に関しては40~70%とばらつきが大きいが,比較的良好である。しかし,10年後には23%に低下するとの報告もあり,長期的な温存が課題となっている(文献2)。
近年増加している小型腫瘍に対しては,これらの自然歴と治療成績を念頭に置き,長期的機能温存をめざした方針を選択することが重要となってきている。

【文献】


1) Sughrue ME, et al:J Clin Neurosci. 2010;17(9):1126-9.
2) Carlson ML, et al:J Neurosurg. 2013;118(3):579-87.

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