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薬と食品,サプリメント

No.4764 (2015年08月15日発行) P.56

長谷川純一 (鳥取大学薬物治療学教授)

登録日: 2015-08-15

最終更新日: 2016-10-26

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近年あらゆるメディアにサプリメントの宣伝が溢れている。もともとは,通常の食生活を行うことが難しく必要な栄養成分を摂取できない場合に,補給・補完を目的に利用するための食品dietary supplementの訳語で,成分は不足しがちなビタミンやミネラル,アミノ酸などである。しかし,最近は健康増進,疾病予防から,疾患治療を目的とした摂取が増えており,薬効を期待するサプリメントや健康食品が増加し,健康被害のみならず,治療薬との相互作用による弊害も出現している(文献1)。
2001年創設の保健機能食品制度(文献2)で,医薬品と通常の食品の間に位置する特定保健用食品(トクホ)と,栄養機能食品が定められた。科学的根拠をもとに個々の商品が認定されるトクホには,ACE阻害作用などを持った「血圧が高めの方に適した食品」や「血糖値が気になる方に……」など,12種の保健機能の表示が認められ,トクホ食品市場が拡大している。これまでジャンクフードの典型と思われていたコーラや,ついにはノンアルコールビールにまでトクホが登場し大きく変化している。
一方,薬効表示が禁じられているにもかかわらず,イメージ広告や体験談で宣伝するいわゆる健康食品を苦々しく思う識者も多いと考える。2015年4月に政府の成長戦略の一環として,トクホ以外の食品にも機能性表示が解禁された。医薬品と区別できない患者が,適正な薬物治療を回避する事態にならないことを祈るばかりである。治療が必要な患者にとっては,保険診療を受けることが最も安全で確実,しかも安価なのである。

【文献】


1) 長谷川純一:循環器内科. 2014;75(2):224-9.
2) 厚生労働省医薬局長通知:保健機能食品制度の創設について. 医薬発第244号, 2001年3月27日.

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