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頭蓋底髄膜腫の治療の進歩

No.4764 (2015年08月15日発行) P.54

川原信隆 (横浜市立大学脳神経外科主任教授)

登録日: 2015-08-15

最終更新日: 2021-01-06

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髄膜腫は頭蓋内腫瘍の20数%を占める最も多い良性の腫瘍である。表在性のものは外科的摘出が第一選択であり,成績も良好である。しかし,深部に発生したものでは,脳神経や脳主幹動脈・穿通枝なども巻き込むために外科的摘除は困難を極め,重篤な合併症も多く,死亡率も高かった。そのような深部髄膜腫に対しては,1990年代から周辺骨を削除する頭蓋底到達法が開発され,良好な視野・術野展開が可能となり,長時間手術での合併症・死亡率が非常に少なくなった(死亡率は数%以下)(文献1,2)。
しかし,2000年代からは生活の質(QOL)重視の考え方が浸透し,脳神経合併症をさらに低下させるため,亜全摘にとどめる傾向が強くなり,手術成績はさらに向上して,脳神経麻痺は10~20%以下になりつつある。これらの背景には,定位放射線治療の進歩があり,小型髄膜腫であれば10年で80%以上の制御が得られるようになったことが大きく影響している(文献3)。
現在の深部髄膜腫の治療は,各種到達法を駆使して摘除を試みる。もし血管損傷・脳神経麻痺などの合併症が危惧される状況となれば亜全摘にとどめ,残存腫瘍が増大傾向を示せば定位放射線治療を行う方針が,多くの施設での標準的な治療法となりつつある。

【文献】


1) Hakuba A, et al:Surg Neurol. 1988;30(2):108-16.
2) Kawase T, et al:Neurosurgery. 1991;28(6):869-75;discussion 875-6.
3) Starke R, et al:J Neurooncol. 2014;119(1):169-76.

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