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手術後の血糖コントロール目標

No.4764 (2015年08月15日発行) P.53

薄井 勲 (富山大学第一内科診療教授)

戸邉一之 (富山大学第一内科教授)

登録日: 2015-08-15

最終更新日: 2016-10-26

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術前の糖尿病合併の有無にかかわらず,外科手術は耐糖能障害の誘因となる。これに対し,2001年にVan den Bergheら(文献1)が報告したLeuven surgical trialで,手術後患者の厳格な血糖コントロールの重要性が示された。すなわち,目標血糖値が80~110mg/dLの強化インスリン療法(IIT)群では,180~200mg/dLの従来療法群と比べ,ICUでの術後合併症罹患率および死亡率が軽減することが示されたのである。その後,同様の報告が相次ぎ,重症患者のICUでの血糖コントロールはできる限り厳格であるべきと考えられるようになった。
しかしその後,同じVan den Bergheら(文献2)が外科手術後患者に加えて,内科ICU患者を併せて解析したところ,非糖尿病患者群では既報の通りIITの有用性が確認されたものの,糖尿病罹患歴を有するサブグループのICU内死亡率は,IIT群で増加する傾向が認められた。また,重症低血糖を一度でも経験すると,死亡率が高まることが証明された(文献3)。それ以降,少なくとも糖尿病罹患歴を持つ患者において,IITは無益あるいは有害であるとの結果が複数報告されている。
現在では,手術後の血糖コントロールは低血糖を避けるように注意しながら,目標血糖値を非糖尿病患者では110~150mg/dLとするのに対し,糖尿病患者では150~200mg/dL程度と,やや高めに設定するのがよいと考えられている。

【文献】


1) Van den Berghe G, et al:N Engl J Med. 2001;345(19):1359-67.
2) Van den Berghe G, et al:Diabetes. 2006;55(11):3151-9.
3) Krinsley JS, et al:Crit Care Med. 2007;35(10):2262-7.
2262-7.

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