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直腸癌における究極的肛門温存術

No.4760 (2015年07月18日発行) P.55

松橋延壽 (岐阜大学がん先端医療開発学特任准教授)

吉田和弘 (岐阜大学腫瘍外科教授)

登録日: 2015-07-18

最終更新日: 2016-10-26

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下部直腸癌における標準術式は,1908年にMilesらにより提唱された腹会陰式直腸切断術(abdominoperineal resection:APR)が,現在でも世界的に広く普及し,行われている。その後,自然肛門を温存し根治術を行う内括約筋切除術(inter-sphincteric resection:ISR)が,1994年にSchiesselら(文献1)によって報告された。以後,欧米を中心にISR手術の適応拡大が進み,1999年からわが国でも施行されるようになった。当科でも2008年からISRを導入し,現在腹腔鏡でも行っている。
しかし,術後の肛門機能において疑問が残るところである。肛門内圧を測定し術後の肛門機能評価を行うべきであり,術後のQOL評価も行うことが重要で,この両者における評価は世界的にも報告されていなかった。当科は,この両者における評価をISRおよび超低位前方切除術(ultra-low anterior resection:ULAR)と比較しても遜色がなく良好であること,さらに1年後の肛門機能QOLも良好であることを報告(文献2)した。
現在,わが国で,肛門近傍の下部直腸癌に対する腹腔鏡下手術の前向き第2相試験(ULTIMATE TRIAL)が予定登録数300例,primary endpoint 3年累積局所再発率で進捗中である。これにより,わが国から本術式の有効性および安全性の報告がなされることが期待される。

【文献】


1) Schiessel R, et al:Br J Surg. 1994;81(9):1376-8.
2) Matsuhashi N, et al:Hepatogastroenterology. 2015, in press.

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