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遺伝子検査による頭蓋顎顔面外表異常の鑑別診断

No.4758 (2015年07月04日発行) P.59

吉村陽子 (藤田保健衛生大学形成外科教授)

登録日: 2015-07-04

最終更新日: 2016-10-26

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頭蓋顎顔面外科領域では,頭蓋骨縫合早期癒合や種々の顔面裂変形などに複数の合併異常をきたして,鑑別に苦慮する多くの症候群が報告されているが,1つひとつの疾患の発生は稀である。藤田保健衛生大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門(主任:倉橋浩樹教授)では,「エクソーム解析による先天異常症候群の責任変異の同定」をテーマに先天異常遺伝子の解析研究を行っており,診断に苦慮する稀な疾患に対し,本人および家族の同意のもとに全遺伝子配列の解読を行い,正確な診断および疾患の遺伝様式の判断に基づく遺伝カウンセリングを行っている。このことは形成外科的な治療方針を直接左右するものではないが,患者および家族に対し,疾患の予後や次の妊娠への影響などについて正確な説明が可能となり,医療者―患者間の信頼関係の構築に大きく貢献するものと考えている。
これまで経験した症例の一部を紹介する。
(1)Crouzon症候群(FGFR2遺伝子):高校生の軽症例。本人・家族とも手術を迷っていたが,遺伝子検査が陽性で,一歩を踏み出せた。
(2)Saethre-Chotzen症候群(TWIST1遺伝子):乳児で整復術後の症例。母親が自責の念が強かったが,遺伝子検査により妊娠中の問題ではないとわかり,やや解消した。
(3)craniofrontonasal症候群(EFNB1遺伝子):男性よりも女性が重症化する疾患。表現型正常の男児がおり,母親がその児の将来を気にかけていたが,遺伝子検査は正常で安心できた。

【参考】

◆ Tatum SA, et al:Arch Facial Plast Surg. 2008; 10(6):376-80.

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