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肺癌手術におけるエネルギーデバイスの進歩

No.4758 (2015年07月04日発行) P.58

武本智樹 (近畿大学呼吸器外科講師)

光冨徹哉 (近畿大学呼吸器外科教授)

登録日: 2015-07-04

最終更新日: 2016-10-26

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組織の切離において,いかに出血を防ぐかは外科の永遠のテーマである。最初の電気メスの臨床応用は1926年であるが,その後多くの改良が加えられ,今でも広く使用されている。現在は体腔鏡手術が普及し,出血の予防はより重要性を増した。このため,新たなデバイスとして超音波凝固切開装置とベッセルシーリングシステムが登場し,総称してエネルギーデバイスと呼ばれている。
超音波凝固切開装置は超音波振動を用いてブレードを高速に振動させることにより,挾んでいる組織が摩擦熱で温度上昇・蛋白変性し血管が閉鎖される。リンパ管や細い血管のシーリングが可能で,凝固・切離を同時にできるのが特徴である。
一方,ベッセルシーリングシステムは,バイポーラ型の高周波電流を使うデバイスで,先端部で組織を挾み,その間に高周波電流を流し,発生した熱で蛋白変性を生じさせる。温度は100℃までで切断には至らないため,凝固後に刃で組織を切離する必要があるが,血管は閉鎖能力に優れ,直径7mmまでの動脈を出血なく切離することが可能であるとされている。
これらのデバイスは改良が重ねられ,2013年には両方のエネルギー源を1本のデバイスで使用できる製品が発売された。また,バッテリーを内蔵したコードレスの超音波凝固切開装置が発売され,取り回しが大きく改善した。
エネルギーデバイスには,出血量の低下,糸・クリップなどの体内残留異物の減少,手術時間の短縮などが期待されており,近年の手術における低侵襲化の必須アイテムのひとつとなっている。

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