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内視鏡下耳科手術

No.4757 (2015年06月27日発行) P.54

小西将矢 (関西医科大学耳鼻咽喉科・ 頭頸部外科)

友田幸一 (関西医科大学附属枚方病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授)

登録日: 2015-06-27

最終更新日: 2016-10-26

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耳科手術の主たる対象は慢性化膿性中耳炎であり,中でも真珠腫性中耳炎に対して鼓室形成術や乳突削開術が施行されている。半世紀以上にわたって耳科手術は顕微鏡下で行われているが,同じ耳鼻咽喉科でも鼻科領域では1990年代から内視鏡が導入され,従来の手術に対して低侵襲で良好な術後結果を得るに至り,患者のQOL改善に大きく寄与し,現在は標準術式となっている。
鼻科領域に遅れること20年余り,今ようやく耳科領域にも内視鏡手術が広まりつつある。その原動力となっているものは,映像のハイビジョン化と内視鏡の小型化という技術革新で,医工連携のひとつの結果である。
従来の顕微鏡下手術では耳後部切開を要し,時に乳突削開を施行し,その手術視野を確保してきたが,内視鏡の導入で完全に外耳道口からの操作で,病変の除去と伝音構造の再建(鼓室形成)を行える可能性が示唆されており,鼻科領域同様に低侵襲で良好な術後成績が期待されている。ただし,鼻腔に比べ狭い領域であるため,内視鏡のさらなる小型化と解像度の向上が求められているとともに,基本的に片手操作という内視鏡特有のスタイルが顕微鏡下での両手操作にどれだけせまれるか,ということが課題である。
現在,当科ではすべてを外耳道口から行う内視鏡手術は,慢性化膿性中耳炎の軽症例に対して行っている。進行例に対しても顕微鏡の視野の補佐として内視鏡を使用している。さらなる技術革新に加え,術式の進歩により,耳科領域においても内視鏡が顕微鏡に取って代わる時代が近いのかもしれない。

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