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BNPとNT-proBNP

No.4753 (2015年05月30日発行) P.52

尾上健児 (奈良県立医科大学第1内科)

斎藤能彦 (奈良県立医科大学第1内科教授)

登録日: 2015-05-30

最終更新日: 2016-10-26

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心不全診療に広く利用されているバイオマーカー,BNPとNT-proBNPについて解説する。
ともに主として心筋細胞でつくられるが,まずはBNPmRNAから前駆体のpreproBNPを経てpro
BNPが生成される。proBNPは心室拡張,肥大,壁応力増加など血行動態変化により循環血中に分泌された後,エンドプロテアーゼによりC端の32アミノ酸からなる生物作用を発揮するペプチドBNPと,N端の76アミノ酸よりなる生理活性を有さないペプチドNT-proBNPに分解される。このようにBNPとNT-proBNPは同一遺伝子から同数生成されるため,血中に等モル存在するはずであるが,実際は代謝経路が異なっており,濃度も異なる。BNPは受容体による内包化,クリアランス受容体による代謝,中性エンドペプチダーゼによる特異的分解,および腎尿細管刷子縁での非特異的分解が行われる。一方,NT-proBNPは腎尿細管での非特異的分解が主な代謝経路と考えられている。したがって,後者の代謝速度は前者より遅く,血中濃度は後者のほうが高くなる。筆者らの検討では,eGFR 60mL/分/1.73m2以上の腎機能があれば,NT-proBNPはBNPの約4~6倍の血中濃度となる。
心不全診療に際してはBNP 100pg/mL,NT-pro BNP 400pg/mL以上を治療対象となる心不全診断の目安に,また,おおむねBNP 200pg/mL,NT- proBNP 900pg/mL以下を心不全治療の目標にすることがよいと考えられる。ただし,これらの値は腎機能障害,高齢,急性炎症で高値に,肥満者では非肥満者より低値となる。重症心不全や腎不全合併例などの場合は,ケース・バイ・ケースで臨床症状をもとに最適値を設定し,それを目標にコントロールする必要がある。

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