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受精卵の着床前遺伝子スクリーニングの特別臨床研究

No.4752 (2015年05月23日発行) P.49

苛原 稔 (徳島大学産科婦人科教授)

登録日: 2015-05-23

最終更新日: 2016-10-26

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卵子などの配偶子が形成される際には染色体の数的異常の発生がきわめて多いことが知られている。繰り返し体外受精を実施しても妊娠しない症例や原因不明習慣流産患者では,このような染色体の数的異常が原因になることが推定されている。
そこで,受精卵を子宮移植する前に着床前遺伝子スクリーニング(preimplantation genetic screening:PGS)を行い,染色体の数的異常がない受精卵を選んで移植する医療が欧米で行われている。検査法として,以前のFISH法を用いた成績では有用性が明確でなかったが,精度の高いアレイCGH法などが使われるようになった結果,有用性の報告が増加している。今後,反復体外受精不成功症例に導入される可能性が高い。
他方,日本では基本的にPGSが禁止されているため,有用性を示す成績はない。日本では特定の遺伝子異常や染色体構造異常による重篤な遺伝性疾患や,習慣流産の回避に限って実施されてきた(preimplantation genetic diagnosis:PGD)。これは遺伝子検査に伴う医学的,倫理的リスクなどを慎重に判断したためである。しかし,日本でも晩婚化に伴って高齢の挙児希望女性が増加し,反復生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)不成功症例が増加していることも事実であり,PGS導入を検討する時期にきていると考えられる。
そのために,日本人を対象とした科学的有用性の検証が必要である。そこで日本産科婦人科学会では特別臨床研究を企画している。その結果をふまえ,倫理的・社会的問題の議論を行って,PGS導入の是非を検討することになる。

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