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多胎妊娠(双胎間輸血症候群)[私の治療]

No.5181 (2023年08月12日発行) P.54

石井桂介 (大阪府立病院機構大阪母子医療センター産科主任部長)

登録日: 2023-08-09

最終更新日: 2023-08-08

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  • 多胎妊娠は流早産のハイリスクであり,NICUを備えた早産の管理が可能な施設と連携した妊娠管理が望ましい。
    一絨毛膜双胎では,双胎間輸血症候群(twin-twin transfusion syndrome:TTTS),一児発育不全(selective fetal growth restriction:selective FGR),twin anemia-polycythemia sequence(TAPS)などの特有の疾患を発症すると予後不良のリスクが高い。特にTTTSとselective FGRの重症例では,胎児鏡下レーザー凝固術(FLP)が選択される1)2)

    ▶診断のポイント

    双胎妊娠のうち,一絨毛膜双胎ではTTTSなどの特有の疾患があり,それらは予後と関連する。妊娠14週までに正確な超音波膜性診断を行い1),一絨毛膜双胎では少なくとも2週ごとの超音波検査を行う。その上で,前述の疾患を念頭に置いて胎児発育や羊水量の観察が勧められる1)

    胎盤吻合血管を介した血流不均衡のために,一絨毛膜双胎の約1割にTTTSが発症する。供血児の羊水過少と受血児の羊水過多により診断され,Quinteroの重症度分類が参考にされる2)。なお,羊水過多の増悪とともに切迫流早産徴候が顕性化する2)

    一絨毛膜双胎の1児の推定体重が-1.5SD以下あるいは両児の体重差が25%以上の場合にselective FGRと診断する。特に,小さい児の臍帯動脈血流異常や羊水過少を伴う場合は予後不良である1)2)。一絨毛膜双胎の1児が貧血,他方の児が多血を呈するTAPSは,中大脳動脈最高血流速度(MCA-PSV)の差が0.5Mom以上の場合に胎児診断される。自然発症例とFLP後の医原性がある。一絨毛膜双胎の1児が胎児死亡に至った場合は吻合血管を介して血流移動が起こるため,生存児の約半数も予後不良となる。生存児の失血によりMCA-PSVの上昇を伴うことがある1)

    無心体双胎(twin reversed arterial perfusion sequence:TRAP sequence)は,胎児死亡児が増大することで発見されるが,診断はカラードプラ法にて無心体の臍帯動脈に逆行性血流を認めた場合とする。健常児の心不全や羊水過多を合併する1)2)

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