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DNA検査

No.4745 (2015年04月04日発行) P.54

辻 彰子 (九州大学法医学)

池田典昭 (九州大学法医学教授)

登録日: 2015-04-04

最終更新日: 2016-10-26

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死因診断のためのDNA(遺伝子)検査は,法医学ではルーチンとしてどこの教室でも実施されているわけではない。主たる遺伝子検査は,死因となった疾患に関する遺伝子の変異解析で行われ,その中心は致死性不整脈を惹起するような心臓疾患(心筋症,QT延長・短縮症候群,ブルガダ症候群,CPVTなど)であろう(文献1,2)。これらの疾患の関連遺伝子は多数存在するため,変異の頻度が高い遺伝子をターゲットにしてシーケンスを行ってきた。しかし,多数の遺伝子を網羅的に解析することが理想的であり,近年,一般の研究室にも導入が可能になった次世代シーケンサーの利用が進んでいる。心臓突然死は,成人でも乳幼児でも内因死の重要な一部分を占めており,関連遺伝子における非同義置換は疾患発症の可能性につながる。
疾患関連遺伝子検査は心臓突然死以外に,生前に臨床診断がなされておらず死因の原因となった遺伝疾患,特定の疾患とDNA多型との関連,死後の生化学検査で酵素活性値がゼロであったことにより判明した酵素欠損例の原因究明などに応用される。また,土壌中の微生物(文献3)や水中のプランクトン,微生物(文献4)のDNAを検出し,鑑定に応用する研究も散見され,実務への応用が期待される。

【文献】


1) Larsen MK, et al:Forensic Sci Int. 2012;219(1-3):33-8.
2) Campuzano O, et al:Int J Legal Med. 2014;
128(4):599-606.
3) Young JM, et al:Forensic Sci Int Genet. 2014;
13:176-84.
4) Kakizaki E, et al:Forensic Sci Int. 2012;220(1-3):135-46.

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