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覚せい剤関連死亡例の実態【覚せい剤関連死亡の社会医学的観点からの考察】

No.4911 (2018年06月09日発行) P.55

谷 直人 (大阪市立大学法医学)

石川隆紀 (大阪市立大学法医学教授)

登録日: 2018-06-12

最終更新日: 2018-11-28

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昨今,わが国における覚せい剤の乱用が大きな社会問題となっており,芸能人など社会的影響力のある人物による覚せい剤使用をはじめとして,一般人の使用が蔓延しつつある。覚せい剤を含む薬物乱用には社会的要因・個人的要因・薬物的要因の3つが関わっているとされている。

これまでの調査1)において,覚せい剤関連死亡は,30〜40歳代の生産年齢人口の中心的世代が6割を占め,独居かつ無職の割合が高い傾向がみられ,死亡者の社会的孤立性が明らかにされている。このような社会的要因が不安やストレスと深く関連し,自傷行為や薬物乱用と深く関わっている可能性が推測されている。

覚せい剤乱用者の約6割が精神疾患などの個人的要因を持つことも明らかにされている。この精神疾患が覚せい剤乱用の原因なのか結果であるのか不明であるものの,依存性に関わっている可能性が推測される。向精神薬や睡眠薬などを病院から多量に処方されている症例も多く,覚せい剤に加えて多種の薬物を同時服用し死亡する薬物的要因がうかがえる症例も多い。医療従事者における向精神薬等の処方の適正管理が必要であるとともに,個人的要因としての精神疾患が加わることにより,社会復帰への道を閉ざしている可能性も否定できない。

覚せい剤使用を防止するためには,精神状態などの個人的要因の改善のほか,社会的孤立の防止,薬物的要因として処方薬の管理が重要であることを再認識する必要がある。

【文献】

1) 谷 直人, 他:法医病理. 2016;22(1):13-20.

【解説】

谷 直人*1,石川隆紀*2 *1大阪市立大学法医学 *2同教授

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