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ベバシズマブ登場後の悪性神経膠腫治療

No.4745 (2015年04月04日発行) P.52

山崎文之 (広島大学脳神経外科学部内講師)

栗栖 薫 (広島大学脳神経外科教授)

登録日: 2015-04-04

最終更新日: 2021-01-06

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悪性神経膠腫の治療は2013年6月に分子標的治療薬ベバシズマブ(bevacizumab:BEV)が初発,再発の治療に認可されて新たに進展した。BEVは血管内皮細胞増殖因子を標的とした分子標的治療薬で,血管透過性が修復され,脳浮腫を改善させ,新生血管の血流に依存した腫瘍を縮小させる。
BEVは臨床試験での良好な結果から,わが国および諸外国で再発の悪性神経膠腫に対して認可されている。一方で,初発の膠芽腫(悪性神経膠腫のWHOグレード4)を対象とした2つの大規模臨床試験において,腫瘍再発までの期間を延長したものの,全生存期間は延長しなかった(文献1,2)。この結果に基づいて,諸外国では初発の膠芽腫に対しては認可されなかったが,わが国ではQOLの改善やステロイドが必要になるまでの期間延長などの効果が重視され(文献1),世界で唯一初発膠芽腫を含めた悪性神経膠腫に対してBEVの投与が認可された。
BEV投与時には腫瘍の血管透過性が低下して造影剤の漏出が減少または消失し,腫瘍が拡大しているにもかかわらず見かけ上奏効しているような画像所見,いわゆる偽性反応を呈することから,従来のMacdonald基準ではなくRANO基準が考案され,T2/FLAIR画像において病変の著しい拡大が起こった場合を病勢進行と判断することになった。しかし,T2/FLAIRのびまん性拡大が認められても予後には影響しないとの報告もあり,BEVが奏効する患者群の見きわめが今後の課題である。

【文献】


1) Chinot OL, et al:N Engl J Med. 2014;370(8): 709-22.
2) Gilbert MR, et al:N Engl J Med. 2014;370(8): 699-708.

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