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小腸移植

No.4733 (2015年01月10日発行) P.48

工藤博典 (東北大学病院小児外科)

仁尾正記 (東北大学病院小児外科教授)

登録日: 2015-01-10

最終更新日: 2016-10-26

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小腸移植は,静脈栄養から離脱できない不可逆的腸管不全症例において,致死的合併症によって生命維持が脅かされる場合や,中心静脈ルートの枯渇によって静脈栄養の継続が困難と見込まれる場合,および,著しくQOLが低下している場合などに適応となる。小腸移植は,移植臓器によって単独小腸,肝小腸および多臓器の3つに大別される。
移植後の短期成績は,導入免疫抑制の改良などにより向上しているが,長期成績は満足すべきレベルではない。この要因としては,急性および慢性拒絶反応の高リスクが長期間持続すること,これに対する免疫抑制療法に起因する易感染性や腎機能障害などの合併が挙げられる。2013年の国際小腸移植登録によると,2013年2月までに2887回の移植が行われている。近年のグラフト生着率は1年で70~80%,5年で50~60%であった。
わが国では,1996年の1例目から2013年6月末までに,22名に対して25回の実施と症例数は少ないものの,グラフト生着率(1年/5年)は80%/62%で,海外と遜色ない(文献1)。術式は,2名の生体ドナーからの肝小腸同時移植が1例あるが,ほかは単独小腸移植例であった。わが国では,脳死下肝小腸・多臓器移植の体制が整っていない点が海外と大きく異なっているところで,喫緊の課題である。また現在,小腸移植は保険適用されていない。2013年末現在,先進医療が承認されているところも2施設のみであり,小腸移植普及の妨げになっている。

【文献】


1) 日本小腸移植研究会:移植. 2013;48(6):390-4.

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