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先天心構築異常への胎児心エコー

No.4729 (2014年12月13日発行) P.44

早田 桂 (岡山大学産科・婦人科)

平松祐司 (岡山大学産科・婦人科教授)

登録日: 2014-12-13

最終更新日: 2016-10-26

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先天心構築異常の胎児診断率は近年急速に向上している。胎児診断は周産期医療の重要な一部となり,産婦人科,新生児科,心臓外科,麻酔科医療の重要な一翼を担っている。
先天心構築異常は5~10人/1000出生と頻度が高く,先天性形態異常の40%を占める。また,生後1カ月以内に死亡する新生児の20%以上が先天心構築異常と,重症度も高い。わが国でも2006年に日本小児循環器学会で「胎児心エコー検査ガイドライン」が作成され,多くの施設で胎児心エコー検査を用いた先天心構築異常の胎児診断が行われるようになっている。しかし,胎児期に診断できているのは約25%とも言われ,特に生後早期に生命を脅かす完全大血管転位や大動脈離断など,流出路や大血管に主な病変がある先天心構築異常の胎児診断率は依然として低い。また,先天心構築異常の9割は低リスク妊婦から出生すると言われていることから,妊婦健診時にいかに検出するかが重要であり,簡便かつ十分なスクリーニング法の普及が望まれる。
『産婦人科診療ガイドライン─産科編2014』(文献1)では,胎児超音波検査での心臓の観察項目として,(1)心の位置と軸は左に寄っているか,(2)左右心房心室の大きさのバランスはよいか,(3)大動脈と肺動脈がラセン状に走行しているか,(4)大動脈と肺動脈の太さはおおむね同じか,が新たに設けられた。産科医全体でも胎児心臓スクリーニングの認識は年々高くなっており,基本的スクリーニングが普及し,診断に至らなくても「正常と異なる」例のさらなる検出率向上が期待される。

【文献】


1) 産婦人科診療ガイドライン─産科編2014作成委員会, 編:産婦人科診療ガイドライン─産科編2014. 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会, 2014.

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