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腸回転異常症

No.4724 (2014年11月08日発行) P.44

工藤博典 (東北大学病院小児外科)

登録日: 2014-11-08

最終更新日: 2016-10-26

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中腸(十二指腸遠位側から横行結腸近位側)は,胎生期に回転しながら腹腔内に還納され後腹膜に固定されるが,この回転が途中で停止したものが腸回転異常症である。本症の発症様式は,中腸軸捻転とLadd靱帯による十二指腸不完全閉塞とに大別される。特に中腸軸捻転を呈した場合には,大量腸管壊死により短腸症候群となるリスクを抱えており,その診断・治療には緊急を要する。
腸回転異常症の標準術式は,捻転がある場合には捻転の解除とLadd手術である。Ladd手術とは,十二指腸の前面を圧迫するように横走するLadd靱帯を切離し,十二指腸と盲腸・上行結腸間の線維性癒着を剥離して腸間膜基底部を広げる,いわゆるnon-rotation状態とするものである。昨今では開腹術のみならず,腹腔鏡下においても本術式が施行されている。術後,長期経過後の再捻転が時に経験されるため,患児・家族への疾患・手術に関する説明も怠ってはならない。また,再捻転予防として腸管固定術を施行する施設もあるが,これについては,効果も含めていまだ結論は出ていない(文献1,2)。
本症では早期診断・早期治療が大量腸管壊死を回避する唯一の方法である。新生児・乳児に発症することが多いが,年長児や成人にも起こりうるため,小児科医・内科医・救急医も決して忘れてはならない疾患である。

【文献】


1) 尾花和子, 他:小児外科. 2005;37(9):1053-7.
2) 田中 潔, 他:日小外会誌. 2012;48(1):76-80.

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