甲状腺未分化癌はきわめて悪性度が高く,予後不良である。腫瘍は急速な増大を示し,診断の時点で既に遠隔転移を認めることも多く,生存期間の中央値は1年に満たない。稀少疾患であるため単施設での経験が少なく,前向き研究の実施も困難である。こうした事実が未分化癌に対する診療の進歩を困難にしてきた。外科治療,放射線治療,薬物療法による集学的治療とともに診断時からの緩和医療が必要であるが,的確な管理方針は確立できていなかったのである。
このような背景から,2009年に有志が集まって甲状腺未分化癌研究コンソーシアムを立ち上げた(文献1,2)。全国の専門施設が共同して症例データベースを構築し,臨床研究を行って,未分化癌の診断と治療を向上させることを目的としている。
現在までに52施設から1087症例が登録され,世界最大規模のデータベースとなっている。さらに2012年からは,医師主導型臨床試験として「甲状腺未分化癌に対するweekly paclitaxelによる化学療法の認容性,安全性に関する前向き研究」が始まった。
1) Sugitani I, et al:World J Surg. 2012;36(6): 1247-54.
2) 小野田尚佳, 他:日甲状腺会誌. 2013;4(2):114-6.