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膀胱尿管逆流症

No.4712 (2014年08月16日発行) P.54

新井真理 (東京大学小児外科講師)

岩中 督 (東京大学小児外科教授)

登録日: 2014-08-16

最終更新日: 2016-10-26

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膀胱尿管逆流症は,膀胱から尿管に尿が逆流することによって尿路感染症や水腎症,腎機能低下の原因の1つとなる病態である。自然治癒の可能性もあるので,感染予防のための抗菌薬投与などで様子を観察することが多い。しかし,感染症を繰り返す症例,腎機能低下などが認められる症例,国際分類grade ⅣやⅤなどhigh grade症例には外科的治療が必要となる。膀胱尿管逆流症に対する外科的治療は,1952年,Hatchによって初めて報告された。その後,手術方法が開発,改善され,治療成績はほぼ満足できるものとなっている。
現在よく行われているオープン手術はCohen法やPolitano-Leadbetter法などで,膀胱を切開し尿管を一度膀胱壁からくり抜き,新たに膀胱粘膜下に作製したトンネルを通して逆流防止機構を再構築し,尿管膀胱新吻合を行う手術である。
2000年代になると,欧米ではDefluxRというデキストラノマービーズとヒアルロン酸ナトリウムの共重合体を尿管口に注入する方法が行われるようになり,日本でも2010年から使用可能になった。膀胱鏡下で尿管口の粘膜下にDefluxを注入して尿管口の形状を変化させ逆流防止を行う方法で,STING法とHIT法がある。オープン手術と比較すると低侵襲であるが,Defluxの注入方法や注入量などによっては再発のリスクはまだ高い。歴史も浅いため長期成績についてはまだ結果は出ておらず,今後症例数を重ねていく必要がある。症例ごとに十分にリスクと利点をインフォームした上で,治療方法を選択する必要がある。

【参考】

▼ 白柳慶之:泌外. 2011;24(3):253-7.
▼ 田口智章, 他 監:スタンダード小児外科手術. メジカルビュー社, 2013, p281-5.

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